主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2024年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2024/09/14 - 2024/09/21
Ⅰ はじめに遠賀川流域は福岡県の筑豊地域を流れ,響灘に注ぐ一級水系である.遠賀川流域は北九州都市圏や流域内の主な水源としての重要な役割を果たしている.石炭産業の終焉や水質汚濁防止法の施行によって,水環境の改善が進んでいる.一方,流域人口約60万人以上が居住しているにも関わらず,低い下水道整備率や河口堰による水の滞留など,水質への人間活動の影響が未だに懸念される.本研究では,遠賀川流域の河川水の主要溶存成分の分析の結果を用いて,流域内の水質の特性を明らかにするとともに,影響を与える因子について検討し,水質の分析結果との相関から形成要因の推定を試みる.Ⅱ 研究方法2021年8月~2023年6月に,二か月に一度流域内で網羅的に選定した約80カ所で採水を行った.現地では気温,水温,pH,RpH,電気伝導度(EC),CODを測定し,研究室ではTOC,ICの測定,イオンクロマトグラフィーを用いて主要溶存成分の分析を行った.そしてGISを用いて地点の集水域ごとに水質への影響を与えるものの負荷量を算出し,得られた水質分析結果との相関を解析する.今回は手法の検討のために2021年12月の測定結果を暫定的に用いて解析を行った結果を報告する.Ⅲ 結果と考察電気伝導度(EC)は極端に数値が高くなる地点がある.それらの地点の水質組成はそれぞれ違っている.空間的な分布の特徴としては,本流側(地図中の西側)でそれらの特異的にECの値が高い地点が複数位置している一方,彦山川側(地図中の東側)はそのような地点は本流側より少ない(図1).その傾向は通年を通してみられる.ECが高い地点(400μs/cm以上)の水質組成は大きく分けてカルシウム-硫酸型,カルシウム-重炭酸型,ナトリウム-重炭酸型,ナトリウム-硫酸型,ナトリウム-塩化物型がみられる.そのうちカルシウム-重炭酸型はECがそれほど高くない地点の多くと同じである(図2).Ⅳ おわりに 遠賀川流域では異なる水質組成の支流が混在しており,イオン濃度が高い地点だけを比較しただけでも,複数の組成のパターンが見受けられる.それらの組成のパターンを定量的なグルーピングを行い,流域内のデータとの相関を検討することが今後の目標である.