抄録
目的: 北海道の一般集団を対象として, ヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染不安の頻度を明らかにし, 利用しやすい検査体制を検討したので報告する。
対象および方法: 北海道新聞で募集した対象3,940人を性・年齢・居住地で層化し, 1,700人の回答者を無作為に選出した。調査は2004年12月, Web上に調査票を掲載し, 回答者がそこにアクセスすることによって行った。
結果: HIV検査に関する情報はほとんど知られていなかった。全対象者の内, 約7%の者が, これまでにHIV感染に対する不安を感じたことがあると回答した。利用しやすい検査施設としては保健所をあげる者が多く, 男性と若い女性は休日昼間あるいは平日夜間の開所を望む者が多かった。採血から判定まで時間のかかる従来の検査方法に比較し, 7割以上の者が即日検査を要望した。
結論: 感染経路としては異性間性交渉が多いと考えられる一般集団において, 実際の検査件数より多くの者がHIV感染不安を持っていた。とくに感染に対する不安が高かった20-40歳代男性と20-30歳代女性の利便性を考えて, HIV検査相談所を運営する必要がある。そのためには, 受検者の匿名性もしくは検査結果や個人情報の機密性を保障し, 相談業務と連携し, 休日昼間もしくは平日夜間における即日検査の実施体制の整備が望まれる。さらに, 検査あるいは相談に関する情報の提供によって, より一層検査の受検を促すことが期待される。