日本建築学会計画系論文集
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CG画像の構図分割による多層連棟住宅団地における住戸からの眺望景観の選好の研究
韓 孟臻宗本 順三松下 大輔
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2005 年 70 巻 588 号 p. 1-8

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抄録

現在、中国では集合住宅の建設が盛んに行われている。住戸は竣工前に分譲されることが多いため、一般に顧客は購入予定の住戸の眺望を、模型や図面から想像して検討を行う。筆者らは、CAD上で対象MRHC(多層連棟住宅団地)の3次元モデルを作成し、写実的な表現が可能なレイ・トレーシング法によるレンダリングにより、各住戸の眺望をコンピュータ・グラフィックス(CG)で再現した。3人の被験者は各々の選好に基づいて、102枚のCGを評価し、その結果を多重回帰分析により調べる方法を試みた。想定したMRHCにおいて、各住戸からの眺望の好ましさを、CGイメージの特性と、住戸の相対的位置により説明することが本研究の目的である。本論文では、多重回帰分析を用い、眺望の好ましさと、2組の予測変数との関係を調べた。1組目の予測変数は、CGにおける景観要素の面積比率である。結果として、「空」、「緑」等、自然に関連する要素が景観の好ましさと正に相関すること、「連棟住宅」、「道路」等、人工的な要素が負に相関することが明らかとなった。さらに、人は絵画や景観を眺める時に、中心部と周辺部に対して、異なる尺度に基づいて知覚するという考えから、CGイメージを「中心領域」と「周辺領域」に、垂直方向に区分することにより、説明力が増大するかどうか調べた。結果として、説明力は、どのように区分しても区分しない場合を上回っており、特に「中心領域」と「周辺領域」の面積比が9:7になる場合に、最も説明力が大きくなった。中心と周辺の区分を反映させた場合の方が、回帰分析の説明力が増大することから、人は景観画像のような二次元の画像に対し、中心と周辺を異なる尺度で知覚していると考えられる。また、正の相関が最も大きい予測変数は、「中心領域の芝生」であり、負の相関が最も大きいのは「中心領域の道路」であった。2組目の予測変数は、住戸の相対的位置である。団地内の緑地や小公園と緊密な関係を持つ変数は相対的寄与率が大きかった。また6階の住戸は、3階と1階の住戸よりも正の相関が大きかった。

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© 2005 日本建築学会
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