抄録
建て替え建設活動の統計的分析の結果次のことが明らかとなった。1)全国レベルにおける建て替え比率の比較の結果, 建て替え活動は近年急速に伸長してきており, かつ, ここ10年来≪東高西低型≫の状況にある。2)「新築」・「分譲」・「建て替え」の住宅活動における構成パターンの経年変化を捉えることで, 各地方の建て替え活動のもつ重要性についての検討が可能である。その結果, 建て替え活動は地方圏型の地域においてとくに重要な位置を占めている。つぎに, 建て替え活動の背景をなしている諸条件との対応について相関分析を進めた結果, 次の点が明らかになった。3)建て替え活動は, 老朽→滅失→建てかえのプロセスをたどるケースも多いと考えられるが, 建て替え活動の地域差として表出する段階において, 老朽化の水準が建て替え水準を規定する決定要因ではない。4)老朽→滅失→建て替えの過程が地域差として顕在化する場合, 住宅事情との関連が深い。老朽水準は都市化の発展段階と一応の相関関係にあるが, 住宅が滅失するためには建て替え回転率ともいうべき住宅の耐用年限要因が介在する。5)滅失建て替え比率には地域による差異がある。その比率は概ね40〜80%の範囲にあり, 滅失が直接に建て替えに向わず, そのまま放置されるか持ち家以外の他の用途に転用される比率は高い。6)建て替え活動は, 少なくともマクロ統計的には住宅の空間的条件, とりわけ敷地条件との関係が深く, 建て替えによって住宅規模の増大が可能となるような条件のもとでより顕在化する。