日本建築学会論文報告集
Online ISSN : 2433-0027
Print ISSN : 0387-1185
ISSN-L : 0387-1185
拡散係数を変数とする室内熱対流解析 : 続報・実測との比較と応用結果
絵内 正道
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 271 巻 p. 69-74

詳細
抄録

実験との比較検討のためには, 壁面加熱方式の採用と実測壁面温度によるのが最も確実な方法であると述べた。しかし, 対象空間規模が実大まで大きくなると, その方法を採れないのが実状であろう。想定空間の熱対流解析と同じ手法によって, 輻射熱授受を取り入れて再現計算した本報告の比較は, その意味では若干の問題を残してはいるが, それでも流れの性向は良く対応し温度分布に関しても, 一応の目処が立ったとしても良いであろう。勿論, それは, 前報で述べたように, 拡散係数値の代入状況が, 妥当であったとの証査を意味するものでは決してないが, 「相応の対応性」は認めることができるのではなかろうか。応用問題としては, 床下に設置したストーブ(熱源であれば何んでも良い)の暖房問題について取り上げた。断熱の不足した住宅にあっては, ストーブからの輻射熱が, 居住室の「暖かさ」にとって欠くことができない, といわれているが, その意味では, 今後断熱程度が向上するにつれ, 室温とその分布が重要視され, 直接的な「暖かさ」即ち高密度の輻射熱に依存する採暖のような暖房は少ななってゆくものと思われる。その段階でのストーブ暖房の1つのあり方として「冷気の排除」に注目した床下空間を利用した暖房形態について検討した。温度分布が良好であれば, 多少の気流速があっても温熱環境上, それ程苦にならない, というのが150〜300mm断熱試作住宅での生活体験であった。一方では, 本報告のような数値解析にて検討し, 他方では, 実際の試作住宅で確認してゆくことで, この種の暖房方法の効果は, より確実なものとして提案されてゆくであろう。

著者関連情報
© 1978 一般社団法人日本建築学会
前の記事 次の記事
feedback
Top