抄録
本報告では, 有限差法に一部撓角法を併用し, 各構造要素の変形を考慮した小梁付き床版の解析を行い, 小梁の設置形式が日型, 目型の2種について, その応力性状を明らかにしたもので, 斯様な架構形式の小梁付き床版の応力特性は大凡次の通りである。(1)周辺固定床版よりも大きな最大負曲げモーメントが平行大梁と床版の接合辺に生じる。(2)小梁の曲げ剛性が小さくなると最大負曲げモーメントは増大する。(3)スパン/小梁丈比が同一ならば, 単一床版の辺長比の大きいもの程, 最大負曲げモーメントは増大する。(4)最大負曲げモーメントの増大は, 小梁と大梁の相対撓みの大きさにほぼ比例する。(5)小梁の撓みは, 小梁自身の撓みの外, 直交大梁の捩れと撓みの影響を顕著に受ける。(6)小梁の荷重支配域は, それに平行な大梁の荷重支配域より小さく, 亀甲型分布形式による略算値は, 小梁自身とそれに直交する大梁には安全側の, 小梁に平行な大梁には危険側の誤差を与え, その値は単一床版の辺長比の大きなもの程大きい。従って, 本報告に示した損傷例のように, 長手大梁に平行な小梁を設置する架構形式は, 小梁に過大な撓みを生じ易いので, 極力避けるべきものと考えるが, この形式によって架構する場合には, 次のような配慮が肝要である。(1)小梁断面はそれに平行な大梁とできるだけ同じ寸度で設計するべきである。(2)小梁に直交する大梁の曲げ剛性と, 捩れを受ける大梁では, 特にその捩れ剛性を高める必要がある。