抄録
人口郊外定着やモータリゼーションの普及という状況の中で, しかも先に触れた長期的な都市構造や環境変化の中で, 既存商店街はその存立基盤を揺さぶられている。長期的にみれば, 個々の商店や商店街の盛衰はどの時代にも起こるであろう。個々の商店経営層にとっては現状の維持や顧客増が目標となるが, マクロな都市構造変動の中では当然, 個々の商店や商店街の衰退, さらに地区のブライト化といった状況も生じうる。本稿の視角はこうしたマクロな都市構造変化の中での商店街立地のバランス, 適応を問題とする。この場合, 大型店や商店街が都市の中でどのように影響しあいながら変動してゆくのかが問題であった。すなわち, 大型店の郊外進出による中断立地の成立や, 都心近接商店街の活性化による中断立地リングの形成といったことは, 都市構造のコントロールという点で重要な事項でもある。分析結果からもわかるとうり, 設定された条件変化によって, 商店街の盛衰の様相が変わることが解る。まず, 人口空洞化の影響は都心近接商店街で最も強く, 自家用車利用率の上昇は都心周辺及び郊外の大型店への依存度を高める。駐車場設置を内容とした都心近接商店街の再開発は中断立地リングの形成を予想させる。特にそれは家具, 電化製品などの住用品Aにおいて著しい。都心から3km前後離れた住宅地に新規大型店を立地させた場合の影響は, 都心近接商店街で大きく, 中断立地状態が強まる。人々の購買地選択行動, 特に購買交通手段を重視した本モデルの有効性は, 以上その1, その2の分析経過からほぼ認められたと考える。しかし, ここでは設定された条件変化の組立てが十分とは言えない。まず, 条件変化が序々に生ずるという問題, 第2に昭和70年という長期の推計値を利用する上での不確実性の増大である。これらの点は各段階での変化を商店街規模等にフィードバックさせて逐次計算を進めれば解決するが, これらに関するモデルの改良は今後の課題としたい。