抄録
自然景観を背景にして建築物が建っている場合を想定して, 合成ビデオと合成スライドを用いた実験を行って, 一定程度の視覚的な影響の傾向を読みとることができた。しかし, 全く人工物のない風景に建築物が一棟だけ建つという, 必ずしも現実的ではない想定をしているため, ここで得た結論をそのまま現実の場面にあてはめることには無理があると思われる。また, 検討した感覚の種類もわずかであるし, 刺激サンプルとした建築物のタイプ, 背景などもかなり限定されているので, トータルとしての景観評価の中での建築物の視覚的効果を論ずるには, まだまだ先が遠い。今後は測定する感覚や建築物のタイプを増やし, 背景の種類にもバリエーションを考えた実験を行うことを計画しており, その結果も近いうちに報告できると思う。なお, 本研究の実験やデータ整理は染川浩, 田畑秀樹(鹿児島大学・大学院)両君との共同・協力による点が多く, 文末ながら謝意を表したい。