抄録
名古屋市内で広域的に常時微動計測を実施し, 地盤・構造物の振動特性を知る一資料を掲示した。本報では総計250サイトにおよぶデータを, ゼロ・クロッシング法, 相関計を用いる方法およびパワー・スペクトル法によって解析した。そして, 地盤種別・卓越周期の平面的広がりの性状, 名古屋地盤の地層構造と周期特性・振幅特性の関係, 地盤・建物の振動性状 (固有周期・減数定数) の分布, そして既往の大地震の被害と常時微動の振動特性の関係についても検討した。それらの結果を以下に要約する。(1)河川流域や南部臨海地域に地盤種別のIII-IV種の地盤が多く認められ, 地盤の軟弱性を示し, 地層構成と良い相関を示している。(2)地盤の卓越周期は, 地表第一層との間に良い対応を示し, 卓越周期分布からゾーニング・マップを作成した。このマップは地盤種別とも相関が有り, 震害分布推定の資料としても利用し得る。(3)地盤の振動減衰性, RC構造の市営団地建物の固有周期・減衰定数を求め, 地震時の地盤・構造物の振動特性を考察するうえで必要となる基礎的資料を得た。(4)東南海地震時の被害率と常時微動の振動特性との関係から, 木構造建物と地盤との擬共振現象による被害の発生を推測し得た。