日本建築学会論文報告集
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家具の置かれ方に関する研究その 1 : 公団分譲住宅における家具密度調査
山本 公也星野 治
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1983 年 327 巻 p. 88-99

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抄録
この住戸(公団住宅67-4, 5N-3DK-分型)はよく練られたプランであり, 当然のことながら必要と思われる家具の置場についてはあらかじめ配慮されている。しかし, このような不特定多数をユーザーとする住宅においてはユーザーの生活様式を一義的に把握できない(殊に昨今では床座と椅子座あるいはフトン就寝とベッド就寝が混在しており一層の多様化を示している)というハンディキャップがあり, そのことが家具についての混乱を助長している点は否定できない。それにも増して重大なポイントは設計する側の予想をはるかに上回る家具が持込まれているという現実である。筆者の印象ではそのことをユーザーも決して好ましいと思っているわけではなく, スペースが過剰なモノによって占処されているのにへきえきしながらもしかたなしに我慢しているようである。なお本研究で調査対象とした家具は入居前の入手か入居後の入手かが不明であり, 家具選択の前提条件としての部屋のサイズ等の影響の度合が明らかでない。しかしヒアリング等から受けた印象では部屋が狭くなるのを我慢してでも必要なものは入手するという傾向は認められるようである。一方住宅を設計する側では家具の量を過少に見積る傾向がまま見られる所であり, 実情との間にギャップがないとはいえない。所定の家具以外は禁止する(というのも立派な見識であり特定のクライアントに対しては成立するであろうが)という方針を貫くことが困難である以上できるだけ多くの家具置場を設けておくのがより好ましい設計であると云えよう。家具置場の問題は最終的には床面積の拡大によって解決されるのは云うまでもないことであるが, 厳しい面積的制約の下でも設計上の配慮によってより多くの家具がより美しくかつ通路, 作業スペース, 開口部等の機能や安全性を損うことなしに納まるようにすることは不可能ではないと思われる。第4章で列挙したコメントのなかにはそのための指針となるものも少くないであろう。いずれにせよ家具によってふさがれることのない大きな壁面ないしは開口部は今日の住宅では特殊なケースを除いて実現をあきらめざるを得ないように感じられてならない。最後に家具の調査, 実測といったプライバシーに関わる事を研究のためとはいえ容認して下さった寺尾台団地の住民の方々に深く感謝する次第です。
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© 1983 一般社団法人日本建築学会
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