2021 年 30 巻 3 号 p. 121-130
イチゴ栽培における収穫・管理作業軽減のために実用化した養液栽培による高設栽培は,従来の土壌栽培と比較し,架台で空中に栽培ベッドが隔離され,栽培ベッドとの物質収支を正確に把握できる利点がある.本研究では,オープンソースハードウェアCPU基板を用いた低コストユビキタス環境制御システムプラットフォームを使った低コスト高設栽培ベッド用培養液管理システムを開発した.本システムは,1セット約6万円で製作できた.自作化・低コスト化が進む高設栽培ベッドに見合ったコストで,供給・排出する培養液量・導電率をオンライン計測できた.さらに,精密な培養液管理による高度生産が実現可能な養水分吸収の見える化を達成した.約2年間の栽培試験を実施し,より精密・高度な培養液管理の達成に向けた知見が得られた.さらに,本システムをオープンソース化し,自作も可能にした.日本のイチゴ生産を支えてきた各地の中小規模施設に導入可能なICTによるDIYスマート化の提案ができたと考える.