2021 年 30 巻 3 号 p. 131-145
本稿は,「兵庫山田錦生産者調査(2016年)」の結果を用いて,農協や農業改良普及センターによる生育診断(穂肥診断と刈り取り適期診断)に対する生産者の意向とその要因を明らかにした.第一に,生育診断に対する生産者の認知状況を把握した.「穂肥診断」は回答者の70.5%,「刈り取り適期診断」は61.3%に認知されており,いずれも全体の3分の2程度の回答者に認知されていることが明らかになった.第二に,診断作業を「自分でしたい」という意向を持つ回答者の特性を把握した.「穂肥診断」は回答者の20.7%,「刈り取り適期診断」も20.7%の回答者が自主的判断の意向を表した.彼らは,これまで自分自身で生育診断を実施してきており,将来,経営の拡大を検討している能動的な生産者であることが明らかになった.第三に,診断作業を「農協や普及センターに任せる」という意向を持つ回答者の特性を把握した.「穂肥診断」は回答者の55.6%,「刈り取り適期診断」では59.2%の回答者がその意向を示した.彼らの主な特性は,経営を拡大する意向はなく,経営の現状維持にも否定的な生産者であることが明らかになった.診断作業を「自分でしたい」という意向を持つ生産者が回答者の2割ほど存在することが明らかになったことで,今後,生育診断を実施する側としては,このような意向の生産者からは的確で効率的に実施できる手法の提供が求められることを想定する必要がある.一方,従来どおりに診断作業を「農協や普及センターに任せる」とする生産者が回答者の6割も占めていることも見逃せない.いずれにしても,生育診断を実施する農協や普及センターの限られた人的資源を考慮すると,多数の圃場を効率的に診断し,その情報を迅速に共有できるICTの活用が必須となるものと思われる.