2022 年 31 巻 2 号 p. 47-58
チャは新芽を摘み取る作物であり,摘採が遅れると品質が低下し,早すぎると収量が低下する.このため,適期を見極めて摘採する必要があるが,現状では熟練者が茶園を巡回し,目視や経験知によって適期を予測,判断することが多い.一方,近年は従来と異なる気象状況も多く,また目視巡回の労力も大きいことから,摘採適期の予測を補助する技術の開発が求められている.
そこで,我々は気象データから積算値を計算し総当たり法により線形回帰モデルを複数作成,赤池情報量規準(AIC)と指定した誤差範囲内で最適なモデルを選択するソフトウェアを構築した.本研究では,3つの品種「やぶきた」,「さやまかおり」,および「おくみどり」の萌芽日から摘採適期における実測気象データを用いて,摘採適期を予測する線形重回帰モデルの構築を目的とした.この結果,各品種において,異なる気象変数の組み合わせによる平均絶対誤差3日以内のモデルが構築でき,どの品種においても対応する平均気温の単回帰分析で得られたモデルより精度が高いことが示唆された.摘採適期を事前に予測することができれば,目視による巡回回数の低減や,チャの安定生産への貢献が期待される.