2023 年 32 巻 2 号 p. 46-56
水稲作を担う経営体が栽培管理作業を適期に行うには,生育予測情報を取得し活用する必要がある.青木らは,千葉県で栽培される主要品種について,出穂期予測とそれに基づく作業適期がスマートフォン等で閲覧できるシステム「でるた」をクラウドサービス上に構築した.「でるた」は,端末の画面上で品種,移植日を選択すると,出穂期予測モデルとアメダスデータが連携した予測結果を受け渡すシステムであり,開発・運用,利用を簡潔にすることをコンセプトに開発された.そこで,千葉県内の15経営体を対象に「でるた」の利用試験を行い,どのように利用・評価されるかを調査した.その結果,操作が容易であり,出穂期の予測精度は±3日以内で実用上問題無く,栽培管理作業の計画と適期実施,特に斑点米カメムシ類の適期防除に有効であり,継続利用したいと評価された.これら利用者の受容態度をロジャーズのイノベーション採用過程,および属性にあてはめ検討したところ,採用速度を速める属性を備え,持続可能性の度合いを高める「再発明」がされたことが明らかになった.さらに,利用者を限定しない運用試験を行ったところ,多くのアクセスがあり受容可能性の高さが実証された.