農業情報研究
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32 巻, 2 号
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原著論文
  • 青木 優作, 望月 篤, 鶴岡 康夫
    2023 年 32 巻 2 号 p. 38-45
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    水稲を主とする経営体が栽培管理作業を適切に行うには,生育予測に係わる情報の取得と活用が必要である.しかし,気候変動や水稲経営体の規模拡大に伴い,従来の方法では各圃場の生育把握が困難となっている.そこで,千葉県で栽培される主要品種について,水稲出穂期予測モデルと地域毎のアメダスデータを用いた出穂期予測と,そこから求められる水稲の生育ステージ及び作業適期を算出する仕組みをクラウド上に構築した.併せて,その情報をスマートフォン等で閲覧可能とするインターフェースを策定し,これらを水稲生育予測システム「でるた」とした.千葉県内の15圃場において出穂期の実測調査を行ったところ,数値予測のモデルの良さを測る指標の1つである二乗平均平方根誤差(RMSE)は2.99日であり,出穂期予測モデルの誤差範囲の目標値である±3日の範囲内は86.7%であった.以上のことから,ICTとその基盤を利用し情報の生成と伝達をする仕組みが簡潔に構築できることを明らかにした.今後,公設試験研究機関の成果である作物や病害虫発生の予測モデルをICTとその基盤を用いて栽培支援システムとして構築する場合,「でるた」は一つのコンセプトになる.

  • 鶴岡 康夫, 青木 優作, 望月 篤
    2023 年 32 巻 2 号 p. 46-56
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    水稲作を担う経営体が栽培管理作業を適期に行うには,生育予測情報を取得し活用する必要がある.青木らは,千葉県で栽培される主要品種について,出穂期予測とそれに基づく作業適期がスマートフォン等で閲覧できるシステム「でるた」をクラウドサービス上に構築した.「でるた」は,端末の画面上で品種,移植日を選択すると,出穂期予測モデルとアメダスデータが連携した予測結果を受け渡すシステムであり,開発・運用,利用を簡潔にすることをコンセプトに開発された.そこで,千葉県内の15経営体を対象に「でるた」の利用試験を行い,どのように利用・評価されるかを調査した.その結果,操作が容易であり,出穂期の予測精度は±3日以内で実用上問題無く,栽培管理作業の計画と適期実施,特に斑点米カメムシ類の適期防除に有効であり,継続利用したいと評価された.これら利用者の受容態度をロジャーズのイノベーション採用過程,および属性にあてはめ検討したところ,採用速度を速める属性を備え,持続可能性の度合いを高める「再発明」がされたことが明らかになった.さらに,利用者を限定しない運用試験を行ったところ,多くのアクセスがあり受容可能性の高さが実証された.

  • 上西 良廣, 南石 晃明
    2023 年 32 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,稲作法人経営に関して競合他社と比較した自社の「強み」「弱み」の評価に注目し,スマート農業技術の将来の導入意向を規定する要因を明らかにすることを目的とする.具体的には,全国農業法人アンケートの調査結果を用いて,今後の普及の伸びしろが大きいスマート農業技術の将来の導入意向を目的変数,自社の「強み」「弱み」を説明変数として,決定木分析を行った.決定木分析の結果,「ドローンや人工衛星を活用した作物の生育状況の計測」に関しては,「生産・加工技術」,「取引先・地域の信頼・ブランド」,「販売・マーケティング」のいずれも優れていると自己評価している法人,「作物栽培機械作業の自動化・ロボット」に関しては,「人材育成」,「生産・加工技術」を優れていないと自己評価する法人において,将来の導入意向を有している割合が高い結果が得られた.このことはつまり,スマート農業技術の普及活動の際に,農業法人のブランドやマーケティング活動,人材育成,生産・加工技術力などを考慮することが有効であることを示唆している.

  • 孫 雯莉, 高橋 英博, 奥野 林太郎
    2023 年 32 巻 2 号 p. 66-75
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    高齢化や後継者不足が課題となっている農業において,農薬・肥料散布などの作業にマルチコプタの活用が拡大しつつある.大規模経営体や作業受託組織における広域に分散する多数圃場を対象としたマルチコプタによる防除作業の作業計画の作成支援を目指し,本研究では無償で利用可能なQGISをベースに,最適な巡回経路に基づいて全作業時間の推定ができるシステムADWSを開発した.ADWSは圃場ポリゴンデータおよび圃場周辺の道路網データに基づいて,利用者が設定した1日の作業上限時間を考慮し,圃場間の最短移動経路で作業を組み立て,作業日,作業時間,作業圃場および移動経路が対応した形で作業計画を作成できる.作業時間の計算では,作業の現況に即して,圃場内作業時間と移動時間だけでなく,機材の積込積降時間および電池交換・薬剤補給時間も反映している.また,利用者は自身の都合に合わせて日毎の作業上限時間を自由に設定可能であり,降雨による作業可否の影響を考慮するための作業可能指数の計算機能も実装しているため,柔軟な作業計画が作成できる.ADWSで作成した作業計画を参考にすることで,作業計画段階の時間削減が期待できる.

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