2020 年 11 巻 p. 217-240
本稿は,高次思考力育成を目指した授業作りについて考察するものである。筆者が在籍する大学院の3期に亘る日本語教育実習の中で,口頭運用能力の向上という大きな目標があったが,筆者はそれに加え「考えさせる」授業を行うことを漠然と考えてきた。第2言語を使用しながら,考えさせようとし,上手くいかなかった2つの挫折について振り返る。1つ目の挫折は,秋実習の応用練習のレベル設定に関わる挫折,2つ目の挫折は,春実習の文化授業での思考力を求めようとした活動内容に関わる挫折である。そこで,先行研究を参考に,1)レベルにあったトピック・タスク設定,2)内容言語統合型の授業(CLIL)で4Cの一つであるCognition(思考),3)学習者に「思考力を使わせる」授業を行う際,教師が行うべきデザイン,クラス活動と質問,4)授業内のインタラクションの分析方法,の4点について整理した。これらをフレームワークとして授業分析を行い,その上で,「考えさせる」ことを,思考力を求める活動とし,改善案を提案する。