抄録
本報告は, 明治30年代から昭和初期を対象期間として, 地方銀行と産業組合の資金面での分業関係と営業基盤をめぐる相互補完の関係を長野県東信地域を事例地域として, その存立基盤や地域の問題と関連させて解明することを目的とした。その結果, 地方銀行と産業組合の間に局地的な資金循環が行われることで, 相互の経営が成立し, 地域の養蚕業や小規模な製糸業などの産業活動が維持されていた。その一方で銀行経営や産業組合の運営をした人物が重複する事例も多く, 地方銀行と産業組合は, 競合関係よりも, 制度や政策上の変化に対応して, 相互補完的に機能しようとする面が強かったことが明らかになった。