抄録
日本における漁業の近代化について歴史地理学的アプローチを試みる場合、漁場の拡大や、それを促した技術革新、その結果生じた流通構造の変化などが考察されてきた。新たな漁業種類の発生·発達による労働市場の再編、例えば漁業出稼ぎ者の受容·輩出や、さらには通魚やその後の移住漁村の形成についても、研究がなされてきた。しかし、漁業をとりまく経済活動は単なる漁撈にとどまらず、水産加工業では食用品だけではなく、工用·薬用品の生産にも関わるため、かつては軍需産業の一環として発展したことも看過できない。すなわち、日本の近代漁業を国家体制から捉え直す作業が求められるのである。本報告では、日本統治時代の済州島において日本人が関わった水産加工業を取り上げ、その歴史的背景を地理学から検討した。