抄録
本研究では, 近代における鉱業資本の生成とその地域的展開の過程で、鉱業権(鉱区所有)を媒介とした鉱業地域の形成と変容について、明治·大正期の新潟県の油田開発を事例に検討した。資料は『鉱区一覧』を用いて、鉱区の分布とその所有関係の歴史的変遷を考察した。明治後期における油田開発に伴う石油鉱業地域の空間的展開は、石油会社本社の集積する長岡市を中心に、基本的に新潟県内で完結していた。しかし大正期になると、石油会社本社(管理部門の東京流出)や「県外」採掘業者の参入によって、東京を中心に展開した広域的な鉱業地域構造の一部分に再編されたと考えられる。