抄録
本発表は、昨年9月11日のテロ事件以降、米国の批判地理学研究者が行ってきた問題提起について紹介し、さらに日本の地理学研究からの発信の可能性を探る。事件後、米国政治は保守化の一途をたどり、メディアもその動きを擁護してきた。こうした政治、及び社会情勢を受け、米国アカデミアにおいては、連邦政府による外交政策に対して異議を唱えることが困難である。しかしその一方で、革新的な思想を持つ研究者や学生が反戦運動を進めてきたのも事実である。テロ事件に象徴されるように、グローバル化がもたらす国際経済の不均衡は、今も深刻な問題を引き起こしている。この一年、批判地理学研究者たちの役割はますます重要になっている。