抄録
1、はじめに 地域調査が授業で年間計画に基づいて実施されることは、諸々の事情により困難であることが多い。今年度より実施されている新学習指導要領では、地歴科・公民科の「地理A」「地理B」「現代社会」においては、地域調査・地域学習の学習項目が従来以上に取り上げ実施の度合いを、強めている。報告者の場合はできるかぎり、これまでにも「地域調査」を授業の中にねづかせるようにしてきたつもりでいる。 今回は、珪藻分析、プラントオパール分析を導入した授業づくりへの展望を考えてみた。学び方学習、考え方学習において学習者に「成果と課題」意識をもたせ、問題解決型の学習をきづきあげてゆくものにつながってゆくものと確信する。 高校生の世代を取り巻く今日の現代社会では、地球温暖化に伴う海水準の変動や稲作の起源をめぐる論がこのところ、声を大きくしている。身近な試料の採取を通じて、分析し結果を考察する学習は、科学的に海水準変動や稲作起源論にせまる教材づくりを可能にし、学校現場ではきわめて有効である。 試料採取では、たとえば、校舎建築の際のボーリング資料・試料入手。あるいは身近な自宅の平坦地の水田や棚田水田等の耕作地。河川部などの沖積平野からの検土杖・スコップ堀などによる土壌採取や山間部の露頭等からの試料集めが可能であろう。十分な科学的成果が上がる設備の整った大学、研究所などに比較すればずいぶんと貧弱な学校の設備ではあるが、うまく活かして、教材づくりをおこなって授業で取り組んでみるだけの価値があるといえる。ただ、一定の科学的成果が発揮できないので、教材づくりでの分析結果は科学的成果の面ではねつ造化へと繋がる危険性は大きいと言わざるを得ないのが、はなはだ残念ではある。限界はあるにしろ、高校生の世代には、科学的に物事を分析・検討・認識化させてゆくことになって行く。様々な結果を通して、最も大切なことは試行錯誤してゆくことを学んでゆくことであろう。ここに、問題解決型の学習成果の結果がしだいと蓄積してゆく糸口が展開されよう。2、研究の目的・方法 本報告では、沖積平野の地形発達史において人間生活の結果の跡を検討する手段としてのプラントオパール分析、珪藻分析を中心としての成果と課題を展望した予測の動向の可否についてから、教材化へ向けてのあり方を若干考察したい。 倉敷平野とは岡山平野の西部地域の高梁川流域をさすものとしたい。岡山平野全域についてはこれまでに「岡山県史」、二宮書店版日本地誌「岡山」編、「岡山県土地分類図」、岡山文庫版「高梁川」「旭川」「吉井川」、「岡山県の地質」、「岡山の地理」等がすでに研究叙述され、ほとんどテキスト的体裁をなしているといえる。しかし、最終氷期以前のあたりから、前の氷期あたりにわたっての微化石分析にもとづく視点に立つ人類文明史的観点からの地形発達史に一歩踏み込んだものはほとんどないといえる。そうした中、1970年代前半、新潟大学の研究グループが本四連絡橋建設にともなうボーリング資料・試料分析からのものがみられ、よく引用されているが、新たな分析をおこなっていないのがおしまれる。花粉分析は、県内の研究者である岡山理科大学の三好教夫により精力的になされているが、これをもとにした岡山平野の地形発達史には深く言及されていないのが惜しまれる。岡山県古代吉備文化財センターの最新の水田址発掘の際に利用され始めたプラントオパール分析試料・資料の蓄積も地形発達史の幅を広げる。鉄穴流しについては、貞方昇「歴史時代における人類活動と海岸平野の形成」がみられる。貞方は、水島地区等で簡易ボーリングを実施して粒度分析を行い、また検鏡作業で鉄穴流しによって、高梁川方面に流されたいわゆる鉄滓等の分析をおこなっている。倉敷平野最西部域の金光町八重地域などにいたっての平野形成に、鉄穴流しの影響が読みとれよう。 岡山の沖積平野の地形発達史における人間生活の跡を見る学習の教材化では総合的な、こうした方法の援用的利用がまたれるといえる。防災対応も、この一連の学習過程の中から、学習者が個々にきづきあげることができるようになる。