日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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剥離面としてみた、吉備高原のいわゆる準平原面遺物について
*阿子島 功
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p. 131

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抄録
吉備高原には、従来、数段の侵蝕小起伏面が想定され、その成因として侵蝕基準面支配が予想されてきた。【吉備高原の侵蝕小起伏面の成因を侵食基準面支配による準平原遺物とする根拠が薄弱】 単に小起伏であることの説明は,ほかにもありえる。 被覆層と基盤岩との差別侵食にもとづく組織地形としての説明はそのひとつである(岡山県西部高山市付近の例,阿子島,1979日本地理学会春大会;ほか)。 【説明対象の定義のあいまいさ】従来の説明対象は,仮想的な復旧面(=接峰面の少し上空)_から_現在地表面,それらの(任意ともいえる)中間のいずれであろうか。仮想的な復旧面とその成因には合理的説明の根拠がない。国外でも事情は同じである(Speight,1986の紹介,東北地理,38-1,p.39)。 剥離面である場合に限っては,説明対象地形を定義できる。その起伏量の規模はさまざまである(阿子島,1984JGU)。 【古い地形面が保存される可能性のあやうさ】すでに岩塚(1970 気候地形シンポジウム)によって提起された問題である。仮に平均面的低下速度0.1mm/年を外挿すると, 1myの間に低下量は100mになるから,1Ma前の実体のある地表面は残り得ない。Akojima(1975,東北大理科報告)は吉備山地で現在の貯水池の堆砂速度を外挿したときに中新統備北層群が残りうる隆起過程を論じた。 【地形面の広がりにかかわらず共通に適用できる剥離面の認定基準】阿子島(1984JGU)の剥離面の認定基準は;『説明しようとする地形面の起伏量と基盤岩をおおう被覆層の基底面の起伏量とがほぼ等しいときに,その地形面は基盤岩をおおう被覆層の基底の剥離面であるとみなす。この両者の起伏量がほぼ等しいとは,残存する被覆層の厚さが,説明しようとする地形面を表現する地形図の最小の等高線間隔より小さい場合をいう。』すなわち、1/25,000図で厚さ10mの被覆層は地質図には表現されるが地形には表現されない.より広い、地域的な説明には15'×10'単位で被覆層基底と現地表の起伏量の比較を用いた(図1 阿子島,1978,当会)。 両者がほぼ一致する地域を示すことができる。 【縮尺1/25,000以上の,あますところない現在地表面成因区分図】岡山県井原市浪形のカキ殻石灰岩の詳細な岩相区分と分布が矢野ほか(1994)によって報告された。ここで中新統の残存状態と小起伏地形(図2a)との関係を検討した。図2bには、(1)残存被覆層の層厚10m以下の斜面および被覆層基底から比高10mまでなめらかにつづく斜面//(2)被覆層が10m以上残存する尾根線//(3)新しい開析谷斜面(被覆層最下部基底から10m以上深い)の3区分を示す。(1)が剥離面とみなせる地形面である。
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