日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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郊外ロードサイド型店舗の成立と中心商店街との関係
神奈川県厚木市を事例として
*田島 幸一郎
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p. 149

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抄録

1.はじめに 鉄道駅前を中心に発達してきた日本の都市の多くは、現在中心商業地の衰退という問題を抱えている。それらの多くでは、1960年代以降、人口が急増した郊外地域を中心に、主要幹線道路沿いに新たな商業の集中が見られるようになった。郊外ロードサイド型店舗が発達した要因として、自動車普及率の増加や、中心市街地の地価の高騰、住宅地の拡大などが挙げられる。また、モータリゼーションの進展に伴い、道路の幅員が狭く、駐車場を確保することが困難な中心商店街は消費者のライフスタイルの変化に追いつくことができず、住民の最も重要な商業拠点としての役割を果たしてきた中心商店街が全国的に衰退してきているといえる。その一方では、中心商店街から郊外ロードサイドへの店舗の移転や支店の設営など、新しい局面も出ている。郊外ロードサイド型店舗は、中央の大手資本によるフランチャイズ店を中心に、さまざまな業種や形態の店舗が立地しているのが現状である。2.研究対象地域と目的本発表では、神奈川県厚木市を取り上げ、郊外ロードサイド型店舗が集中している地区の現状とその形成過程を明らかにするため、店舗の出店年代、業種、系列の有無、従業員数などを指標とし、郊外ロードサイド型店舗の実態を明らかにする。また、中心商店街との関係を、中心商店街からの出店動向などから分析する。方法は、店舗の開設年度や系列の有無を指標に、郊外ロードサイド型店舗と中心商店街のそれぞれの店舗分布図を作成し、また、双方を利用する買い物客の属性と意識に関する調査を行い、併せて分析した。 研究対象地域のある厚木市は都心から約50kmの距離に位置し、東京都心部への交通アクセスに優れている。また、一方では工業集積地としての性格を持つことから、人口吸引力のある都市である。市内を通過する小田急小田原線の本厚木駅周辺は大規模な小売店舗の集積が見られ、郊外ロードサイド型店舗は、駅から1km_から_3kmの距離に集中している。3.結果 郊外ロードサイド型店舗は、自動車による来店客を主な対象としており、買い物客は自動車によって駐車場の整備された店舗を自由に選択することができる。また、業種によって商圏が大きく異なっているのも特徴である。郊外ロードサイドのように、店舗が大規模になればなるほど店舗間の距離も広がることから、中心商店街のように軒を連ねることはない。また、商店街に見られるような組織が形成されにくく、各店舗の独自性が強いといえる。厚木市の事例では、郊外ロードサイド型店舗に中心商店街からの出店を含めた地元資本の進出が盛んであることがわかった。

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