日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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流域水収支法によるグリッドタンクモデル係数の最適化
*沼尻 治樹野上 道男
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p. 153

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抄録
1.研究の概要DEMと気候値メッシュデータ(1km×1km,月値)を使用して,グリッドタンクモデルによって流域水収支を推定する研究で必要となるタンクモデルの最適パラメータを河川流量データから推定する研究を行った.対象流域は,北海道の26流域である(Fig. 1).1km×1kmのグリッドに1つのタンクを置くタンクモデルを考案し,グリッドごとに算出される流出量を流域単位で集計して,月単位で河川流量データと照らし合わせを行い,その差異が最小になるように流域ごとにグリッドタンクモデルの最適パラメータを探索した.2.使用データとその処理 使用したデータは,空間解像度1kmの気候値メッシュデータ(気象庁)の月平均気温,月降水量,250m_-_DEM(国土地理院)を使用した.また,流量データは,1990_から_1999年の流量年表(国土交通省)から月平均値を計算した.データの処理にはC言語による自作プログラムを使用した. 流域の抽出は,先ず,250m_-_DEMの5×5範囲の最小値を用いて洪水法アルゴリズムによって落水線方向マトリックス(1km_-_DDM:Drainage Direction Matrix)を生成し,流域面積ファイル(水系図)を作成した.次に,DDMを逆順にたどるアルゴリズムを用いて流量観測所の上流域を特定し,流域コードで対象流域を確定した.3.流域水収支モデルについて 流域水収支は,分散型のグリッドタンクモデルの入出力を流域ごとに集計するという方法によって計算した.このグリッドタンクモデルは,飽和流出口,中間流出口,基底流出口の三つの流出口を備えている.このうち,中間流出口,基底流出口には流出率を設け,貯留高に比例した流出があるとした.また,タンクの上限から底までを第1容量(深さ),中間流出口より底までを第2容量(深さ)とした.すなわち,このモデルのパラメータは,中間流出率,基底流出率,第1容量,第2容量の4つである.4.積雪・融雪モデルについて 開発した積雪・融雪モデルは,これまでに構築したグリッドタンクモデルのサブモデルである.積雪と融雪は,気温によってのみ影響されるという単純なものを考えた.このモデルのパラメータは,降雨・降雪判別気温と融雪係数である.5.パラメータ探索法 冬季の北海道の流域では入力(降雨+融雪)がなく,流出は基底流出が主であると考えられる.そこで,融雪が始まる直前である2月の河川流量データとの適合が良くなるように,対象流域の基底流出に関わるパラメータ(第2容量と基底流出率)の自動探索を行った.次に,融雪流出のない月について河川流量データとの適合が良くなるように,流出に関わるパラメータ(第1容量と中間流出率)の自動探索を行った.
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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