日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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パネルディスカッション(第3部):地理学の社会的責任
*中村 和郎阿部 征雄小泉 武栄戸所 隆中田 高山口 幸夫
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p. 176

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抄録
地理学は、5億1000万km2の地球表面を対象とする。人間が登場してからでも100万年以上の歴史をもち、紀元2000年以降は60億人を越える人間がここに生活している。人間が1人として同じでないように、地表のどの部分をとってもまったく同一であることはない。その位置と、その場所における大気・水・陸・生物・人間の相互関係、他の場所との相互作用、及びそれらの歴史が地表に多様性を与え、地域の個性を形作っている。 かつて人間は自然を畏敬し、その土地の「自然の理」にかなっていると信じるものの考え方や技術を生み出し、自然の困難さに遭遇しながらも、自分の住む土地の美しさを知り、それを愛する心をもっていた。「空間の豊かさ」も知っていた。 しかるに、今日、政治経済のグローバリゼイションと、時間距離・費用距離を極限まで短縮する情報化の進展は、全世界を均質化して、地理学の存在理由である地域差を喪失させ、位置や距離がもっていた意味を失わせてしまうかのようにみえる。日本学術会議第18期特別委員会は、「物質・エネルギー志向」を目指した価値観から「こころ」重視の価値観へ転換する新しいライフスタイルの確立のための具体的な方策を提起した。この価値観の転換期における地理学の役割と社会的責任について検討した。GISの導入による地理情報の取得や分析、伝達の方法は地理学に格段の進歩を促した。しかし、工学系の人たちは、たとえば衛星画像の解析に基づいて、いわば「上からの視点」で地域計画を立てるが、その際に地理学が伝統的に蓄積してきた「下からの視点」に立つ研究手法や成果とのリンクが欠けていた。物質・エネルギー志向の社会では、人間が自然と切り離される傾向があった。こころ重視の時代には、書物から得られる知識以上に、自然と直接向き合って知的感動を体験することが大切になる。技術や知識よりも人間のこころをとらえる地理学を構築しなければならない。「費用がかかっても安全であり、持続可能である」ことを主張する必要も出てこよう。普遍性・一般性に対して、個別性(地域の多様性)が重要であるとの認識をもつのも地理学であるが、全体(地球規模、国規模、流域規模など)と個(市町村規模、上流域・下流域など)の調和をどのようにつけることができるのかは、今後に残された大きなか課題の一つである。首都一極集中か、地方分散かの問題なども、すぐれて地理学的な課題である。
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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