日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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長野県における「日向」「日影」地名の立地傾向に関する研究
*宮崎 千尋
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キーワード: 気候地名, 長野県, 日向, 日影, GIS
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p. 186

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抄録

気候地名とは、日照・風・降水などの気候要素に関連した文字のついた地名のことをいい、代表的なものに「日向」「日影」などがある。気候地名に関する研究は、これまでの成果が吉野(1997、2001)に詳細にまとめられ、非常に関心の高まっている課題である。特に日射に関する地名は数多く、福岡(1988)による広島県内の「陰地」「日南」の地形条件を統計的に明らかにした研究は、非常に興味深い。本研究では、吉野(2001)でも明らかにされているように、「日向」「日影」地名が日本で最多で、起伏に富んでいる長野県に注目し、その立地傾向をGISを用いて調査した。 地名データには、「数値地図25000(地名・公共施設)」を用いて、「日向」「日影」を含む地名を抽出した。地形のデータとしては、「50mメッシュ標高」を用いた。25000分の1地形図で確認した結果、長野県において「日向」「日影」などの地名が表す地域は、地名の中心から半径100m程度の円形の範囲が妥当であったため、その範囲で標高の値を平均した。さらに周囲の値から傾斜方位・傾斜角度をもとめ、日射の代替値として、南から45度の角度で日が当たった場合にできる地形起伏による陰影も算出した。 抽出した地名は、「日向」52例、「日影」30例である。傾斜方位に関しては、「日向」は南向きが中心だが、「日影」は北向きが少なく、北東向きと北西向きと、地域によって違っていた。傾斜角度は、「日向」のほうが「日影」よりやや大きくなっていた。地形起伏による陰影は「日向」が明るくなっている。県全域でのこれらの地名の分布は、大きく3つの地域に分かれて布しており、これは起伏や流域の地形的な特徴によるものと考えられる。聖山を中心とした北西部は標高1000m前後で、「日向」の数が「日影」を上回る。「日影」は北西向きが多かった。南部は天竜川沿いに両地名が多く、伊那・赤石の山地の中に特に「日影」が多く存在する。この「日影」は北東向きか西向きとなっていた。東部は千曲川近くの起伏に富んだ地域で、日向が圧倒的に多く、川の走向に沿って南西向きの斜面を形成している。特に「日影」の立地にみられた、傾斜の緩いところか北西・北東向きという傾向は、南北に山や谷が発達している起伏の多い地域であるがゆえの特徴といえる。

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