日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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西海地方における藩際捕鯨業の展開
*末田 智樹
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p. 55

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抄録

 近世の捕鯨業に携わっていた大規模経営体を鯨組と称していたが、本報告では、西海地方に焦点をあわせて、近世前期から幕末期にかけての鯨組の変遷を地域的に捉えつつ、捕鯨業の実態に迫りたい。 17世紀初頭に紀州の太地で成立した捕鯨業は、17世紀中頃になると紀州地方からの技術伝播によって、西海地方でも盛んに行なわれるようになった。とくに平戸藩の特権商人によって本格的に行なわれるようになり、その後大村藩、五島藩、唐津藩、福岡藩の領域内へと拡大していき、多くの中小の鯨組の勃興をみた。 近世後期になると、中小の鯨組の中から一段と大きな鯨組が出現するようになり、なかでも平戸藩生月島の益冨組が代表的である。この益冨組は、大村藩や五島藩の他領国の漁場にて積極的に捕鯨業経営を展開するようになり、幕末期には、西海地方最大の鯨組へと成長していった。 以上のように西海地方の捕鯨業は、近世前期から多くの藩内で行なわれるようになり、幕末期には、藩を越えた、いわゆる藩際捕鯨業が展開されるようになっていった。

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