抄録
1.はじめに 水循環の一部を担う雲は,地球の放射収支と気候を制御する最も重要な要素と考えられる。すなわち,地球規模の明確で詳細な雲の情報は気候や気象の理解に必要とされる。このため,世界気候研究計画(WCRP)は全球的な雲分布の把握を目的とした国際衛星雲気候学計画(ISCCP)を設立した。これによって,近年は各国の気象衛星を利用した輝度と雲の全球規模のデータセットが作成され,雲が気候に与える影響や役割についての研究,および雲の解析法の研究が数多くなされている(i.e.Rossow and Schiffer 1999)。しかし,ISCCPによる雲分類は可視データを使用するため,その解析は日中に限られるものである。この問題を解決するため,Inoue(1987a)はSplit Windowデータを用いることによって,光学的に薄い巻雲型と光学的に厚い積雲型を分類する方法を提案した。 Inoue(1989)は,ある特定期間における雲型分類を行い,Inoue(1990)ではSplit Windowから算出した海面水温と水蒸気量から西部熱帯太平洋における対流活動地域を示した。さらに,巻雲型は雲の放射強制力において温暖化効果があることを述べている(Inoue,2000)。しかし,雲型分類の気候値は未だ明らかにされておらず,年内変動等の特徴は明らかにされていない。 そこで本研究は,Inoue(1989)に基づいた6種類の雲型分類を行い、その気候値から熱帯地域における各雲型分布を明らかにすることを目的とした。2.データ 使用したデータは,極軌道衛星NOAA-9に搭載されたAVHRRのチャンネル4,およびチャンネル5を利用したSplit Windowデータである。これは,グリッド間隔が0.1°×0.1°の12時間毎のデータである。今回の解析では,このデータを1°×1°グリッドの月平均データに直し,そこから気候値を求めたものを使用した。したがって,示される図は1°×1°グリッド内における各雲型の存在割を示すものである。また,対象期間は1986年から1993年までの8年間である。3.結果 光学的に厚いCumulonimbus Typeの発生割合は,他の雲型に比較して小さく,Thin-Cirrus Typeの発生割合が最も高く見られた。また,西部太平洋のような海面水温が高い領域においてCumulonimbus Type,Thick-Cirrus Type,およびDense-Cirrus Typeの発生割合が高く,海面水温が低い東太平洋上では,Low-level Cumulus Typeの発生割合が高いことがわかった。