日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
会議情報

農村地域の学校がまちづくりにおいて果たす役割
兵庫県神戸市西区櫨谷町の事例
*高尾 堅司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 86

詳細
抄録
農村地域にニュータウンが開発されると、農村地域は様々な影響を受ける。しかし、農村地域における旧住民と新住民の交流形成期において、どのような人々あるいは機関が主要な役割を果たすかについては検討が不十分である。そこで、本研究では兵庫県神戸市櫨谷(はぜたに)町(兵庫県神戸市)と西神(せいしん)ニュータウンを調査対象地域とし、新旧住民がどのような過程で交流事業を展開するに至ったのかについて検討する。 櫨谷町は、神戸市の西部に位置する21.50km2の町である。神戸市は、西神ニュータウンと周辺地域の道路、河川、田畑を整備するなど、櫨谷町の自然環境に手を加えた。西神ニュータウンは、神戸市が1965(昭和40)年に神戸市総合基本計画の一環として策定したものであり、計画面積は約634ha、計画人口は61,000人である。事業期間は1971(昭和46)年から2004(平成16)年である。 1975(昭和50)年代から現在にかけて、櫨谷町内で発行された広報紙及び資料を収集し、これに基づいて櫨谷町と西神ニュータウンの関係性について検討した。また、櫨谷町民数名に対するインタビュー調査もあわせて実施した。 西神ニュータウン開発が進むにつれて、町内の県道を通行する工事関係車両が増加し、町民は町内の交通事故の増加を懸念し始めた。これに対して、櫨谷小学校は児童の交通安全を図るため、全児童に対して県道(小部明石線)付近での自転車通行の禁止を徹底させた。その他、同校は開発で失われてゆく自然環境と伝統を見直し、地域に対する愛着感と誇りを児童に保持させるため、1984年から「しめなわづくりの会」を実施している。櫨谷小学校の児童が町内の老人会のメンバーからしめ縄作りを教わることで、地域の伝統を残して行くことを目的にしている。 一方、櫨谷中学校は、町内の生徒数の減少と西神ニュータウンの街開きを受けて、櫨谷町から西神ニュータウンへ移校した。その新しい街で、当時の学校長は櫨谷町の婦人会を招いて、西神ニュータウン住民と盆踊り大会を催した。さらに、櫨谷中学校の文化祭で櫨谷町の文化を紹介するなど、地域間交流を促進した。現在では、神戸市のまちづくり条例を制定したことを受けて、櫨谷町の自然環境を利用した新たな動きが認められている。櫨谷町の北から南へと流れる櫨谷川を、櫨谷町住民と西神ニュータウン住民と共に守って行くことを目的とした櫨谷川愛護協会が発足した。その活動は年々盛んになっている。さらに、櫨谷町の各地区が持ち回りで、「櫨谷川まつり」を実施している。このまつりは、櫨谷中学校以外の中学校の生徒が参加するほか、櫨谷町及び西神ニュータウンの婦人会の企画などが実施されている。 以上の櫨谷町の動きを概観すると、櫨谷小・中学校の教職員と住民が主体的に開始したコミュニティづくりが、神戸市のまちづくり条例制定を契機に櫨谷川愛護協会の発足と櫨谷川まつりの実施という交流事業に発展した。地域における小中学校の新旧住民への働きかけが、新しいまちづくりに貢献した点は、今後のまちづくり運動に示唆を与えるものと考えられる。
著者関連情報
© 2003 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top