日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
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書店チェーンの立地展開に関する企業行動論的考察
*秦 洋二
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p. 89

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抄録
_I_ はじめに 近年,いわゆる多店舗経営型小売業者(以下小売チェーン)は,わが国の小売業部門における中心的な役割を担うようになっている.それと同時に,わが国の小売業は大きな構造変化の波にさらされている.零細店の衰退と入れ替わる形で,小売チェーンは発展してきたのであり,その特徴としては,本部と店舗の間に明確な分業体制を敷いているということが挙げられる.すなわち,本部が一括して大量仕入れを行うことで,仕入れ価格の低減を図り,それを多数の店舗によって分散的かつ大量に販売するのである._II_ 問題の所在 小売チェーンの発展は,今や小売業一般に広く見られる傾向である.しかし,この小売チェーンという現象そのものが,業種によっていかなる特徴を持っているのかということはこれまであまり問題にされてこなかった.だが,例えば書店業界は,業界全体の構造変化は小売業全体の中でも著しい部類に入り,チェーン化の進行も著しいものの,書店で販売される主要商品である書籍・雑誌は,日本の場合,再販売価格維持制度(以下,再販制度)や委託返品制度といった業界特有制度の存在によって,その販売価格は固定されており,スケールメリットによる小売チェーン発展の説明が当てはまらない部分が大きい.このように,一口に小売チェーンと言っても,業種毎に様々な特徴があり,それぞれの業種・業界の特性を考慮に入れて研究する必要がある._III_ 結果と考察 書店業界の特徴としては,取次会社と書店との間での垂直的企業間関係の影響力が強い点が挙げられる.例えば,雑誌の取引についてはかなり明確に一店一帳合制が敷かれている.よって,本研究では主に福岡県を事例として,書店チェーンの立地展開を帳合別に分類し,分析を行った.福岡県には主として3つの取次会社が主要帳合取次となっているが,このうち二大大手取次会社と帳合関係を結ぶ書店チェーンは,ショッピングセンター(SC)内への出店や,駅ビル内等へのターミナル型出店を行っている.また,全県的に最も多い書店の店舗形態は郊外型店舗であるが,これは郊外型の場合出店費用が比較的少なくてすむためである.業態的には,書店業界では近年CD等マルチメディア商品との兼業が積極的に行われている.しかし,このような兼業にも主要帳合関係を結ぶ取次会社の企業戦略の影響が見られ,帳合取次会社が積極的にCD等との兼業を推進する場合に,帳合書店の兼業率は向上している.また,立地的には同じ帳合の書店チェーン同士では競争回避的な立地傾向が,異なる帳合同士のチェーン同士では競合的な関係が見られ,書店チェーンの立地動向に取次会社との垂直的企業間関係が一定の影響力を持っていることが明らかとなった.
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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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