日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会秋季学術大会
会議情報

関東内陸部における降水成分の特徴と大気汚染に関する気象学的研究
*枝廣 智子福岡 義隆
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 97

詳細
抄録
1.はじめに関東内陸部において、海陸風および山谷風が汚染物質の運び手として大きな役目を担っている事は過去の研究により報告されている。汚染物質の一つであるオキシダント濃度はNOxの排出量の多い南関東地域よりもむしろ内陸地域で高濃度を示すことがあり(図1)、上田、長野盆地や福島県郡山では夜間にオキシダントの高濃度域が観測されている。またNOxやSO2の二次汚染である酸性雨についても、1975年から関東1都6県を中心として行われている酸性雨調査において内陸部で低いpHを記録している。本研究では、関東平野内陸部の例として埼玉県熊谷市および群馬県太田市を挙げ、降雨の採水および分析を行い、気象学的な観点から降雨中に溶け込む成分と汚染物質輸送との関連性を考察した。2.研究方法降雨の分析:埼玉県熊谷市(立正大学熊谷キャンパス)および群馬県太田市(関東学園大学)において2002年5月末_から_12月(太田は9月まで)の期間にそれぞれ39降雨分244サンプル、32降雨分200サンプルを採水した。採水装置にはHORIBA製レインゴーランドを利用し、湿性降下物のみを初期降雨について降り始めから1mm毎に最大7mmまで分割して採水し冷凍保存した。サンプルは常温で十分に解凍してからpHおよび電気伝導度(EC)を測定し、DINEX社製イオンクロマトグラフでNH4+,Na+,K+,Ca2+,Mg2+,SO42-,NO22-,NO3-,Cl-の9イオンについて成分の定量を行った。pHとECの測定には簡易式pHメータ(TwinpH B-212)および簡易式電気伝導度メータ(Twin cond B-173 )を用いた。分析データは、イオンバランス等の精度を評価したうえで解析を行った。気象解析:降水日の前後について気圧配置及び風系図から収束域をメソスケールで確認し、また後方流跡線解析を行った。3.結果熊谷と太田において同じ降雨日の成分濃度変化は同様の傾向を示した。またpHとECは逆相関を示し、ECと相関が高いイオン成分はH、NH4、NO3、SO4であった。降水のECの時系列的な変化は次の3タイプに大別できた。_丸1_1mm目が最も高濃度で徐々に薄くなるタイプ、_丸2_2mm目以降に濃度のピークが現れその後希釈されるタイプ(図2,3)、_丸3_ピーク後に再び高濃度があるタイプ。これらの変化は降雨パターンに依存しており、例えば降り始めがシトシトで途中から強い降雨に変化した場合、ECは急激に減少する傾向にある。図1.関東圏におけるオキシダント濃度分布図(2000年7月23日14時)図2.熊谷市における降雨のpHとECの時間変化(2002年7月9日)図3.熊谷市における降雨の主要成分濃度変化(2002年7月9日)
  Fullsize Image
著者関連情報
© 2003 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top