日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会春季学術大会
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都心周辺部への定住
1990年代の名古屋における人口変動と住宅再開発
*尾崎 由利子
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p. 000019

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抄録

1 課題の所在と研究の目的 都市の中心部における居住を示す「都心居住」は、日本においては1970年代後半から都市計画等の分野で用いられた用語であるが、この言葉が、実際の都市中心部の人口増として顕著にあらわれてきたのは1990年代である。 都市中心部における人口増の理由と来住者の性質について、欧米のインナーエリアについては地代ギャップの存在とジェントリファイアと続く人々の流入※2、また日本の都市では、バブル崩壊後のマンション増加と、東京にみられる単身者や熟年夫婦の流入を指摘する研究などがある。※3 しかし、都市中心部に居住しようとする人が実際どのような人々で、今後どのような定住あるいは移動をするのかについては、さらに研究の必要があると考えられる。また、都心中心部でのマンションの増加は東京と大阪以外の多くの都市以外でもみられる現象であり、それぞれの都市においても都市中心部の人口増加について検証が必要であると考えられる。 そこで、本研究では名古屋都市圏を対象に1990年代特にバブル崩壊後に都心周辺部において増加した居住者の性質と移動履歴を明らかにすることを目的に研究を行った。2 研究の対象と方法 本研究の対象地域として、名古屋都市圏の都心周辺部より12学区(3地区)を選び、下記のデータでシフトシェア分析及び年齢コーホート人口移動分析を行った。  分析対象 分析データ  ※4  (1)人口移動の変化 住民基本台帳・転出転入者数  (2)コーホート別人口変化 住民基本台帳・年齢層別人口  (3)居住する住居の種類 国勢調査・住宅の建て方別人口  (4)新居住者の性質 マンション居住者アンケート 3 都心周辺部への定住 90年代後半の人口移動 対象地区は、20代前後の若年層の流入が非常に多く、その後、30代前後で市外など郊外方向へ転出していく都心周辺部に典型的な人口移動パターンを示していたが、1990年代後半には、市外と外縁部の郊外方向への移動量が減少し、都心周辺部の地区に留まる傾向があらわれた。20代後半から30代の市外への転出は減少し、市外との社会増はマイナスがプラスに転じた。この結果、対象地区の人口は増加あるいは横ばいになったといえる。4 都心周辺部の中高層住宅地化 都心周辺部に30代前後の居住者が得た住まいは、多くは中高層マンションであると考えられる。対象地区は戦前及び戦後直後に開発された低層住宅と店舗及び中小の事業所が立ち並ぶ地域であったが、1990年代に中高層住宅の建築が増加した。マンションが建設された場所は、この地区に残っていた長屋建てまたは町屋タイプの住宅や事業所の建物だった土地が少なくない。対象地区の変遷の概要戦前・戦後直後 1980年代 1990年代耕地整理・区画整理    → 容積率増加・交通整備 → 地価の下落住宅地化・一部工業地化 中高層化・事業所ビル化 低層住宅等がマンション化5 まとめ 本研究で得た知見によると、1990年代後半の名古屋の都心周辺部の人口増の理由は、従来郊外方向に転出していた20代後半から40代前半の人の都心周辺部での定住である。郊外方向へ転出せずに都心周辺部に住居を得た人の住居は多くは中高層マンションであり、これらの人はマンションを定住地として、これからも住み続けようと考えているのである。※1 本研究は名城大学・都市情報学研究科修士論文(2001年1月提出)の第2章と第3章の一部を加筆・訂正したものである。※2 Smith N. , 1986, Gentrification of the city, ed. Neil Smith and Peter Williams, Allen & Unwin※3 富田和暁「大都市圏における最近の変容に関する若干の考察」2002.3,都市圏研究部会※4 住民基本台帳と実居住者数の差は1%弱(2001筆者名古屋市調査) 金子2001「国勢調査人口・住民基本台帳人口の一致性」では高齢層・若年層に差が大きいとされる

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