日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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天山山脈南縁における段丘面変位と活構造
*渡邊 三津子
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p. 111

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抄録
はじめに
ユーラシア大陸中央部に東西約3000kmに横たわる天山山脈周辺では,活発な地殻変動が現在も進行中であることが地質学的・測地学的に明らかにされている。しかし,第四紀後期の地殻変動に関する地形面の変位などに基づいた地形学的研究は十分になされているとは言いがたい。
本研究の目的は,中国新疆ウイグル自治区の天山山脈南麓地域における,河成段丘の分布を明らかにするとともに,その変形から第四紀後期の地殻変動について検討することである。
地域概要と研究方法
タリム盆地およびトルファン盆地では,天山山脈南縁に並行して,新第三系_から_第四系を変形させた活構造(活褶曲)が形成されている。天山山脈から流下した河川が,活褶曲の背斜部にあたる山地を開析して先行谷を形成するとともに,その中に複数の河成段丘を発達させている。また,向斜部には小盆地が形成され天山山脈起源の土砂で埋積されている。
本研究では,最大地上解像度約3mのCORONA衛星写真を用いて河成段丘地形を判読し,地形分類図や活構造分布図を作成する。あわせて,判読結果をもとに,現地において段丘面の現河床からの比高等を調査し,当該地域における地形面の変形を明らかにする。
結果と若干の考察_-_ディナ河およびクチャ河の扇状地の事例_-_
CORONA衛星写真の判読によれば,ディナ河西方の背斜構造の縦断面形(図1,a_-_a'_-_a'')は,中央付近(a')が最も高く,a_-_a' 間で,開析扇状地面が上流側に逆傾斜している。また,開析度の違いから形成年代を異にすると考えられる河成段丘も同様の傾向を示し,高位の面ほど顕著な変形が認められる。このことから,ディナ河西方の背斜構造は,少なくとも河成段丘形成期以降も累積的に変位していると考えられる。
また背斜の北縁b地点では,扇状地を形成した流路に直行する北向きの崖が認められ,開析度の異なる複数の地形面を変位させていることから,活断層と判断される。
以上のような判読作業の結果,タリム盆地北縁のほぼ中央部に位置するクチャとルンタイの間を南流する,河川(クチャ河・ディナ河ほか)が形成した複合扇状地では,東西約100km,南北幅約5_から_10kmにわたって,河成段丘面を変形させた活構造が認められ,背斜縁辺部には活断層が分布することが明らかになった。
本報告では,CORONA衛星写真の判読結果に現地調査によるデータも加えて,天山山脈南縁における河成段丘の変形について述べる。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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