抄録
本研究では、三大都市圏に次ぐ広域中心都市の大都市圏を事例地域として、バブル期前後における分譲マンションの供給地域の変化を解明する。対象地域は1995年国勢調査において設定された、札幌・仙台・広島・福岡(および北九州)をそれぞれ中心都市とする大都市圏である。 研究対象は1983_から_2003年の21年間に販売された民間資本の分譲マンションで、分析のための基礎データは不動産経済研究所が刊行した「全国マンション市場動向」各年版である。分析に際しては3年毎に立地時期を設けたが、その基準となったのが1989_から_1991年のバブル期である。 各大都市圏で観察されるバブル期(PB期)の最大の特徴は、中心都市の都心区(札幌市中央区、仙台市青葉区、広島市中区、福岡市中央区)における供給量の構成比が、大都市圏全体の中で相対的に低下したことである。その一方で、他の時期では供給実績が殆ど無い自治体においても、バブル期にはある程度の供給実績が認められる。 バブル期に中心都市の都心区が構成比を低下させていることは、いうまでもなく都心や都心周辺部の地価が暴騰した状況を反映しているが、バブル後、特に近年において再び都心区の構成比が上昇傾向にあることは、逆に地価下落を映し出した結果であると判断できる。地価下落は不景気の根源のようにマイナス評価を下されがちであるが、居住地の選択幅を広げたという観点に立てば、社会の成熟化を後押ししたとプラス評価することも可能であろう。