日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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埼玉県におけるコミュニティバスの発展過程
*清水 大介
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p. 115

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抄録
1.はじめに モータリゼーションの進展により、乗合バスの地位は年々低下している。その結果、地域交通確保のため各自治体は様々なバスサービス(廃止代替、スクール、福祉など)を実施し、最近では自主運行バスも多い。しかし、廃止代替、自主運行バスなどに関する個別の研究は散見されるが、地域交通確保のための各自治体の対応という視点から、バスサービスを都道府県レベルで捉え、運行当初からの変化を時系列的に、また運行にかかわる法的枠組みとの関連から検討した地理学の研究は見られない。そのため、本発表では、地域交通確保のため市町村が運営・企画に関与し利用者が限定されないバスを、運行主体にかかわらずコミュニティバスと定義した上で、コミュニティバスの開設経緯、運行形態、問題点などを明らかにすることを目的とする。2.研究対象地域及び方法 研究対象地域とした埼玉県は、_丸1_旅客輸送に占める乗合バスの分担率が全国平均に近い_丸2_県内に過疎化地域、都市化地域など多様な地域が認められる_丸3_自治体数が90と多いため地域特性に応じた様々な対応が想定される、以上3点の理由から選定した。研究方法としては、県内各自治体ホームページ及び県交通対策課資料などによりコミュニティバスの運行が確認できた61自治体/団体(以下、単に自治体と表記)について、_丸1_開設経緯_丸2_運行形態_丸3_問題点を探るためのアンケート調査(一部自治体にはアンケート内容を含めた聞き取り)を実施した。その結果、56自治体から回答を得た(回答率91.8%)。また、県交通対策課及び国土交通省関東運輸局旅客第一課への聞き取り調査も行なった。本発表では、開設経緯と運行形態に関するアンケート結果を中心に報告する。3.結果と考察 埼玉県におけるコミュニティバスは、1972年の両神村での運行を嚆矢とする。その後、90年代前半までに運行を開始した自治体は、バス事業者が赤字のため撤退した路線を引き継ぐ廃止代替バスが大部分で、県西部の山間地域での運行が多い(道路運送法80・21条該当)。そのような中、80年代前後からは、県東部の平野地域でも、バス運行を行なう自治体が少数だが認められる。これらは、域内の交通空白地域と公共施設とを結ぶ自主運行バスで、主として高齢者など交通弱者の利用を念頭に置いている。そのため、曜日限定の運行形態で、料金も無料の場合が多い(4条貸切)。そして、90年代中葉以降には、県内各地で自主運行バスが急増する。都市化の進展した県南部では、狭隘部の存在などにより交通不便地域となっていた地区と公共施設や駅を結ぶものが多く、受益者負担の点から料金は有料の場合が多い(4条乗合・80・21条)。なかには、運行時間帯や本数の面で、地域交通確保というよりは公共交通として位置付けられるほどに充実している事例もある(4条乗合)。一方、県東部・北部では依然として交通弱者を念頭に置いた運行が多く(4条貸切)、廃止代替バスの運行も見られる(80・21条)。しかし、近年ではニーズに合わせたルート変更などにより、徐々に充実した運行を行なう事例もある(4条乗合・21条)。
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