日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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荒川扇状地地盤構造データベース
*早乙女 尊宣栗下 勝臣門村 浩石田 武高村 弘毅
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p. 133

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抄録
概要 立正大学大学院地球環境科学研究科ORC (オープンリサーチセンター)プロジェクト3 「環境共生型手法による地下水再生に関する研究」の一環として,荒川扇状地とその周辺低地を対象に,1)雨水_-_地下水インターフェイスとしての地形・表層物質の性状と空間分布の解析・表示(詳細地形学図作成),2)地下水のメディアとしての地盤構造のデータベース化と解析・図化,という2つのサブテーマで作業を進めてきた.これらサブテーマの作業を進めるには,詳細な地盤情報を得ることが重要である.我々は,ボーリングデータを収集し,以下のような検討をおこなってきた.データの収集と電子化ボーリングデータは,3階建て以上の建築物・道路・橋梁・立体交差・上下水道・河川改修工事・鉄道・高圧電線鉄塔・ガス管などの設置工事に伴って調査が行われる.限られた時間で,能率よくボーリングデータを収集するために,我々は荒川扇状地内で公共構造物を取り扱う国・県・市町村の情報公開制度等を利用し収集することにした.2004年6月30日現在,集めたデータは約1,000本で,GISソフト「総合地盤情報管理システム G-Cube for Windows」(中央開発KK製)に入力を行っている.入力したデータは,荒川扇状地のどの位置にボーリングデータが存在するのかを容易に知ることができる.ソフトの機能を利用すれば,瞬時に必要な地点のデータをプリントアウトすることも可能である.また,ボーリングデータを複数選択して,簡易的な地質断面図を描くことができるため,多くの断面図を作成し研究・調査に活用することができる.データ入力後も,原本はファイルにまとめ保存する予定である.また,このデータベースから得られた結果は,インターネット上に公開する予定であるので,荒川扇状地及び周辺地域で地形・地質・水文の研究・調査などに大いに活用してもらえれば幸いである.地盤構造解析とその意義 荒川扇状地を主に構成する砂礫層は,N値や色調などから砂礫_I_(N≦50)と砂礫_II_(N>50)に区分できる.現河床で確認された砂礫_II_と考えられる露頭は,押切橋下流側まで確認でき,以後現河床に埋没する.固結状態で花崗岩の風化が著しい.これから,扇状地内の現在の荒川は,砂礫_II_上面の勾配より,明戸_から_押切橋までの下刻区間,押切橋_から_旧久下橋が堆積区間に分けられる.砂礫_I_と考えられる露頭は,砂礫_II_と比較して未固結状態にある.層厚は薄いが,明戸から下流側に向かうに従って徐々に厚さを増す. ボーリングデータを多数得ることで,データベースは地形形成過程・地下水・地盤沈下・地震災害・液状化現象等を検討するための重要な資料となり,その需要が見込まれる. その成果として,現成の扇状地面に確認できた旧期面と新期面の砂礫層の色調は,前者が後者よりも黄褐色系統が目立つ.主体となる礫径は,前者より後者が分散している.これらは,旧期面及び新期面の形成された時代,洪水形態,運搬力が異なる事を示している.また,堆積物の種類,粒径,マトリクスを詳細に記載し,地盤構造の3次元表示及び地盤型区分図の作成を行うことにより,地下水の流動状況を高い精度で検討することが可能であり,扇状地の形成過程を明らかにするための重要な手がかりともなる.
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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