抄録
〔はじめに〕茨城県に位置する谷田川を含む牛久沼流域(面積約166km2)は、現在つくばエクスプレスや首都圏中央連絡自動車道の建設に伴う土地区画整理事業が進められ、宅地開発による人口増加とそれに伴う汚濁負荷排出量の増加が懸念されている。そこで、当研究室では同流域を対象として、開発による水循環や物質循環への影響を明らかにするため、水・物質循環のモニタリングとモデリングを実施している。ここでは、その研究成果の一部を報告する。
〔調査の概要〕2001年4月から2004年現在までの間、流域内の河川水、地下水、農業用水について、窒素やリン等の栄養塩濃度や無機イオンの主成分濃度を測定した。また、NO3-Nの窒素安定同位体比を分析した他、河川や地下水の水位を複数地点で連続観測し、河川流量を定期観測した。
〔結果および考察〕(1) 河川水質の特徴:2001から2002年度の調査を通じ、各窒素成分濃度は灌漑期に低く、非灌漑期に高い傾向が得られた(図1)。T-N濃度の平均値は、灌漑期と非灌漑期にそれぞれ2.1 mg/lと3.4 mg/lで、T-Nに占める無機態窒素(NO3-N、NO2-N、NH4-N)濃度の割合は年間を通じて平均約81%であり、NO3-Nがその94%を占めていた。濃度と流量を乗じて負荷量を求めると、灌漑期と非灌漑期における水質の差は比較的不明瞭で、灌漑期における低濃度は、主に流域外から導水される農業用水(灌漑期のT-N濃度は1から2 mg/l程度)により河川水が希釈されることに起因すると考えられる。
一方、T-PとPO4-P濃度には明瞭な季節変動が見られず、T-Pは濃度、負荷量ともに灌漑期のほうが非灌漑期よりも高い傾向が得られた。T-Pに占めるPO4-P負荷量の割合はおよそ36%で、懸濁態による流出が比較的重要であることが示された。
(2) 河川水質と流域の土地利用率の特性:汚濁負荷の流出特性は、流域の土地利用や気象条件等に影響される。流域の土地利用率と河川水質を定量的に評価するため、流域内の複数の河川において各水質測定点を下端とした18の小流域を設定し、河川水の窒素やリン、炭素の濃度および負荷量と流域の土地利用率との相関関係を評価した。小流域毎の土地利用率は細密数値地図(1994年)より算出し、水質の値は2003年8月(灌漑期)と2004年1月(非灌漑期)の各データと、2回を平均した年平均値を用いた。
解析の結果、年平均T-N濃度は農地の面積率と最もよい相関があった(r=0.65)。農地を水田と畑地およびその他の農地の2種類に分類すると、畑地と比べて水田の面積率の方がT-N濃度と相関関係が強かった(r=0.49)。月ごとのデータで比較すると、水田の面積率とT-N濃度の相関係数は灌漑期に高く(r=0.75)、強い相関関係があった(図2)。
これらの成果を含め、本報告では流域の河川・地下水の水質特性に関する詳細を発表する。
