日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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都市化地域における河川水質と土地利用の関係
*田林 雄大森 博雄
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p. 176

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抄録
_I_.研究背景 都市化が河川水質に与える影響は大きいと考えられるが、従来の河川水文研究は都市化の影響の少ない山間部で多くなされてきた。また、河川水質は主に流域の地質、土地利用によって規定されると考えられるが、こうした土地条件と河川水質との関係についての詳細は未だ不明な点が多い。河川周辺の土地利用から河川水質との関係を推定したものはあるが、両者を一対一に対応させ関係を論じたものは少ない。さらに、河川水質データはその河川でも数地点で観測される場合が多く、物質収支や河川水質をより空間的に把握する必要があるといえる。_II_.研究目的・方法 一流域における河川水質と土地利用の関係を解明する。 流域全体を、河川の主要な合流・分流で支流域に分け、それらを土地利用構成によって分類する。また、支流域の最下流部で採水し、両者の関係を検討する。 流域の土地利用構成は国土地理院刊行の10mメッシュ細密数値情報を用い、GISソフト、TNTmips6.8によって算出する。 水質は、現地で水温、EC、pH、アルカリ度(HCO₃⁻)を測定し、実験室で主要無機イオンであるSO₄²⁻, NO₃⁻, Cl⁻, Mg²⁺, Ca²⁺, Na⁺, K⁺の計量をする。 また、従来、都市の河川水質を表す尺度として、BODやCODが多く用いられてきた。いずれの手法も溶存有機物量を計測することが目的であるが、結果は高い、低いとしてしか現れない。すなわち、土地利用が河川水質に影響を及ぼしているということは明らかになるが、どういった土地利用が水質に強く影響を与えているかは明確に表現しにくい。河川水に溶存する複数の無機イオンを調べることで、特定の人間活動が、河川水質を形成していく過程をみることが可能となる。 本発表では2004年3月期に行った調査で得られたデータを提示する。_III_.研究対象地域 千葉県北西部に位置する、坂川である。東京都心部から北東約30km圏に位置し、東京のベッドタウンとしての性格が強い。都市化がこの30年で進行した。当地域は下総台地にあり、地質条件は比較的均質であるため、地質が水質に与える影響は比較的小さいと考えられる。また、坂川の特徴として、上流部で利根川からの導水が挙げられる。_IV_.研究結果・考察 流域全体で目立った水質変化をもたらす支流域の合流はほとんどみられなかった。これは本流に比べ流入する河川水の流量が少ないためであると考えられる。河川水質は流下に伴ってCa_-_HCO₃型からNa⁺やCl⁻をより多く含むものに推移し、その間、ECは徐々に高まった。利根川からの導水部でECは266μS/cmを示し、坂川放水路河口で272μS/cm、坂川河口で351μS/cmを示した。坂川上流域の台地を刻む谷部に発達した住宅地からはNa⁺を多く含む水塊が流入する点で共通していた。これは、人間活動が活発である証左だといえる。_V_.参考文献・ 大森博雄(2003):「高精度測定法による多摩川水系の水収支・物質収支の動態把握と河川水質形成機構の解明」.とうきゅう環境浄化財団研究助成・学術研究,31(227),37p
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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