日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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英国「ナショナル・カリキュラム地理」における系統地理的学習内容の変化
環境・資源・開発をめぐる課題を重視した地理教育へ
*志村 喬
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p. 22

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抄録

 英国初の全国統一初等・中等学校向け地理科カリキュラム「ナショナル・カリキュラム地理」は,1991年に制定されたものの,さまざまな批判を受け(志村 1998),1995年版,2000年版へと改訂され現在にいたっている。これらカリキュラムの内容は,1991年版の枠組みを用いれば,「技能」「場所」「テーマ」の3領域に大別される。 本発表は,2回の改訂における地誌的内容(「場所」)と技能的内容(「技能」)の変化の検討(志村2003,2004)に続き,系統地理的内容の変化を明らかにし,それをカリキュラム開発の点から考察することを目的とする。 研究の結果,環境・資源・開発をめぐる課題が,改訂で重視されていったことが明らかになった。また,そこではそれら諸課題をコンフリクトを内包すると捉えながら,様々な視点から学習する姿勢が強くみられた。 地理教育と地理学との関係からすれば,このような変化は,地理学における社会応用的内容を地理教育が教育的判断のもと積極的に導入した結果と考えられる。地理学との地理教育の乖離,とりわけ最先端の地理学研究の成果を地理教育に導入することの難しさは,英国でしばしば言われてきたが,両者の接点の1つは「環境・資源・開発をめぐる課題」に見出す事ができよう。 

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