抄録
政府においては、1995年に「地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議」を設置し、GISの利用を支える地理情報の整備と相互利用の環境作り等に計画的に取り組んでいる。2000年のGIS関係省庁連絡会議の申し合わせでは、政府が保有する地理情報については、インターネットで無償提供することを基本としている。政府のGISに関する行動計画である「GISアクションプログラム2002-2005」においても、「この方針に則り、2005年までにほとんどの空間データ基盤に該当する項目がインターネットにより提供されるようにする。」と書かれている。国土地理院においても、アクションプログラムに基づいて様々な地理情報の電子化・提供の施策を推進しているところである。 国土地理院では、GIS構築に不可欠な基盤情報として、数値地図データ(骨格的地図情報)の整備・提供を行っている。数値地図25000(空間データ基盤)は、2万5千分1地形図に相当する精度を持つ、道路中心線、鉄道中心線、河川中心線、水涯線、海岸線、行政界、基準点、地名、公共施設、標高の10項目のデータである。数値地図2500(空間データ基盤)は、全国の都市計画区域(約96,000平方キロメートル)を対象に、道路、河川、行政区域界等の骨格的地図項目を数値化したデータである。これらのデータは、国土地理院のHPから自由に閲覧できる。骨格的な地図情報は、アクションプログラムにおいて、定期的な更新を重点的に実施することとされている。特に2万5千分1地形図の情報については、全データがベクトル化されたことにあわせて、リアルタイムでの情報更新(1ヶ月以内の更新)を目指した取り組みが行われている。また、全国の2万5千分1地図情報を試験公開している地図閲覧サービス「ウォッちず」も新たにスタートした。地図を閲覧するためには、索引図による検索、地名および公共施設名による検索、経緯度による検索、市町村名による検索と、様々な方法での検索が可能である。また、空中写真のインターネットによる閲覧サービスも、東京・大阪・名古屋に限定して実施されている。このように、様々な地理情報が国土地理院のHPから閲覧できるようになってきており、地理教育におけるGISの活用を、様々な面からサポートしている。 電子国土とは国土地理院が提唱している概念で、様々な国土に関する情報をコンピューター上に再現した仮想的な国土のことである。国土地理院では、電子国土を実現する施策の1つとして、電子国土Webシステムを2003年7月に公開した。国土地理院は、電子国土の参加団体の1つとして、全国をカバーする2万5千分1地形図をはじめとする国土地理院が所有する地図情報を背景地図として提供するとともに、電子国土に参加するために必要な技術情報や枠組みを提供している。地理情報の発信者は、電子国土を利用することにより、国土地理院の地図を背景にして、自らの持つ地理情報を上乗せしてHPから発信することができる。電子国土の利用者は、特別なGISソフトや地図情報を用意することなく、地理情報の発信や利用ができる。電子国土の技術情報は、現時点では公的機関や教育機関、NPO等に限定して提供しており、2004年7月時点で42のサイトが立ち上がっている。教育機関が参加している電子国土サイトを紹介すると、光華女子学園の『はーとふるまっぷ』は、光華女子学園の学生・生徒と教職員らが協力して手作りで作成した京都の福祉情報地図である。実際に現地を(車いす等を用いて)歩いて、写真等を活用してHPを作り、京都を少しでもたくさんの足の不自由な方が散策して頂けることを目指して発信している。また、(株)パスコでは、つくば市教育委員会と協力して、つくば市内の全小学校が参加しそれぞれの学校のプールに居るヤゴの生息について調べた結果を電子国土を利用した地図に載せて、「ヤゴの救出大作戦」として提供している。今後、技術情報を一般公開することにより、個人が自分の旅行記などを電子国土を使ってHPから発信するなど、飛躍的に地理情報の発信が進んでいくものと考えられる。また、電子国土の活用により、双方向での地理情報の発信・受信が可能となり、教育現場でのGISの活用が様々な視点で広がっていくことが期待される。http://cyberjapan.jp/