日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会春季学術大会
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瀬戸内海沿岸流域における河川中の浮遊物質・溶存有機炭素・溶存窒素の変動
*吉田  浩二小野寺 真一齋藤 光代西宗 直之峯 孝樹重枝 豊実竹井 務
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p. 188

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抄録
1. はじめに
 瀬戸内海沿岸地域では、近年赤潮の発生要因の1つとなる富栄養化が問題になっている。しかしながら、河川を通じて陸域から海域への栄養塩の流出過程はまだ十分に定量化されていない。特に瀬戸内流域では降雨イベント時の栄養塩の流出量が平水時に比べて1オーダー以上多いこと(小野寺ら、2003)から、洪水時のフラックスを明らかにすることは重要である。
本研究では、降雨イベント時の河川における浮遊物質及び溶存物質のフラックスを明らかにすることを目的とする。特に植物プランクトンの栄養分となる有機炭素・溶存窒素に注目して、定量化した。
2. 研究地域及び方法
試験流域(Fig.1)は、広島県豊田郡瀬戸田町(生口島)の小河川流域である(流域面積 ha)。基盤地質は主に花崗岩である。流域源流部は急勾配な山地河川となっており、中流部以降には扇状地が形成されている。源流部は、2000年の山火事の影響で植生密度が低下しており、また、その直下が高速道路の建設工事が行われている。また扇央から扇端がみられる中流から下流部にかけては果樹園と住宅地が混在している。流域の河口付近に水路型の堰を設置して、水位計により水位を自記記録し、水位_-_流量曲線を作成して流量に換算した。調査期間は2003年5月_から_12月である。降雨時にはオートサンプラーを用いて河川水を採取した。採水した試料水は実験室に持ち帰り、5.0μmのメンブレンフィルターを用い、吸引ろ過を行い、浮遊物質の重量を測定した。また、吸引ろ過した試料水は全有機体炭素計を用いて、溶存有機炭素(DOC)と全窒素(DTN)の分析を行った。
3. 結果と考察
1)図2・3に降雨イベント時における流量とともにDOC濃度、DTN濃度、DOC及びDTNフラックスの変化を示す。降雨と流量は対応しており、雨が降った約20分後に流量が変化している。また降雨の終了とともに流量は短時間で減衰した。DOC濃度・DTN濃度は流量の上昇とともに低下した。DTNフラックスは流量の上昇時にピークになり、流量のピーク時には低下した。一方、DOCフラックスは流量のピーク時またはピーク後にピークがみられた。この結果は流量のピーク時に地域が主な流出寄与域になっていることを意味し、果樹園ではなく山火事流域や宅地地域などの可能性が高い。
2)降雨イベント時における浮遊物質濃度及びフラックスは流量の上昇とともに増加した。特に浮遊物質フラックスは流量とともに指数関数的に増加した。また、浮遊物質フラックスは降雨強度にも依存していることが確認でき、流域上流部の道路建設現場や山火事跡地からのホートン地表流による流出が示唆された。
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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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