地理学習における「学力」と小・中・高連携の問題
The Issue of achievement and integrate in Geography Education
近 正美(千葉県立生浜高等学校)
Msami KON(OIHAMA High School)
キーワード:地理教育 小・中・高校 カリキュラム 学力
keywords:Geography Education, lower school & high school, curriculum, achievement
1.何のために「小・中・高」連携が必要か
地理学習の発展を前提すると,小学校・中学校・高校と子どもたちの発達に伴って地理学習の「質」と「量」,そして,学習方法が吟味されていく必要がある.
大きなポイントは「地理学習」へのモチベーションをどう高めていくかにある.某予備校の車内広告に「学力低下より、気力低下が深刻だ!」とあった.この「気力」の問題が教員にとって最大の課題だ.そのために授業の展開の仕方や手法,内容も含めて工夫を重ねるのが教員の仕事だろう.
2.「棲み分け」を模索する小・中・高の連携を
小・中・高の地理学習の構造は学習指導要領に規定されている.岩田和彦は「内容主義+事例主義+方法主義の社会科地理及び地理歴史科地理の誕生」(2003・21世紀の地理・p19)としている.に小・中・高を貫くこの構造の中で「調べ学習」が強調され,繰り返し調べ学習を子どもたちが行う.しかし,同じような感じのする「調べ学習」を繰り返し行うことは,「意欲」を高めることにはつながりにくい.
学習指導要領が最も狙って(望んで)いるのは,地理担当教員の発想の転換ではないのか.いわゆる「受験学力」としての内容主義からる教員を解放するために「調べ学習」を強調しているとわたしは考えている.また,「内容知」から「方法知」へと転換を図ろうとした.この意図をわたしは評価している.しかしその「教育力」が文科省には不足している.
3.「学びがい」のある地理教育
現実の世界に直結する地理学習においては,現実の世界を反映した,学んで,「タメ」になるという実感が必要である.そのような実感が持てるところから学習への意欲が維持される.
4.発達段階を踏まえた地理教育
子どもの「世界」(空間)認識の発達を踏まえて地理教育が行なわれる事が必要である.地理学習に限ったことではないが,達成感のある学習内容を適切に配置していくことが重要である.
5.他教科との「棲み分け」
時間数削減の中で,他の教科や総合学習などに地理学習の内容を振り分け,「任せる」という戦略が必要である.そのような中から地理教育の中核部分が改めて浮かび上がるのではないか?
6.内容・事例・方法の適切な組み合わせ
生徒の実情に合わせた内容と,内容に即した事例の選択,そして,適切な授業方法の選択が重要である.特に授業手法についてわたしたちはもっと工夫していく必要があるのではないか?
7.授業手法の多様化
授業手法の吟味と多様化が必要である.わたしたち教員の語る言葉が子どもたちにどのように伝わるのか、十分反省する必要がある.
8.新しいタイプの「知識注入」型学習
「暗記」の再評価が必要ではないのか?知識なくして,学習の発展なしではないのか.あまりにも「地名・物産」の地理学習を避けようとする余り,「暗記」を罪悪視しすぎるきらいがあるのではなかろうか?暗記のみを追及するのではなく,蓄積した知識から導かれる思考力や推察する能力,仮説を立てていく力をもっと重視していく必要がある.
9.リアルな世界象が描ける地理学習
何が現実で,何が非現実かを吟味する力と、その現実世界とうまく折り合いをつけていく力とを育成できる地理教育を目指す必要がある.そのようなリアルな世界観の中から、主体的に生きる地球市民的資質の育成が図られる.今の子どもたちにとって,リアルそのものがどれだけリアリティがあるのか?現実世界に浮遊するような子どもたちの足を地につけていくような地理学習の構築が最も重要である
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