抄録
人為によって引き起こされる水環境の変化は、時代とともに変化すると同時に、地域によってもその様相は異なる。 時代の要請によって、「自然環境との共生」や「環境再生」が議論される中、建築や地域マネジメントの分野などが主体となり、様々な「地域再生プラン」が錬られ、実行されつつある。 しかしながら、それぞれの地域特性や、「環境」そのものに対する分析が十分でない事例が多く、かつての開発一辺倒の展開と大差ない画一的な方向性が際だち始めている。 そこで、「水循環」をベースとする「水文学」や「地誌」を活かした「地理学」の視点や手法をもとに、対象地域を絞って「古水文環境」なども踏まえた「水文誌」と「水環境データベース」と作成し、地域特性を踏まえた「水環境保全・再生」のあり方を考察している。 本論では、雲仙普賢岳の火山災害から約10年を経て、復興から新たな地域の将来像を模索しつつある島原市や島原半島全域を取り上げ、地域特性を明確にすると同時に、今後の「水環境保全・再生」の方向性について探る。