日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 102
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発表要旨
衛星全球降水マップGSMaPの概要と地理教育分野での活用
*山地 萌果松本 淳
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キーワード: 降水, 気候, GIS, 地理教育
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抄録

降水情報は、気象・気候・水循環の研究といった科学的な目的での利用のみならず、人間活動にも直結する情報として、農業、公衆衛生、水資源管理、教育など幅広い分野での利用が拡がっている。近年は地球温暖化や気候変動に関連して、世界各地で干ばつや洪水といった極端現象が発生しており、世界の雨分布を監視することがこれまで以上に重要となってきている。

降水量は、雨量計や気象レーダなどの地上測器によって観測が行われてきているが、観測地点は限られる。日本のように高密度な観測網が整備されている国は世界的にみても少なく、観測がおこなわれていても過去情報がアーカイブ・整備されていないことも多くみうけられる。近年では、リモートセンシング技術に進歩により、衛星センサによる継続的な降水観測が実現されており、国境を問わず海上も含めた広範囲の降水情報が取得可能となっている。

宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency; JAXA)では、全球降水観測(Global Precipitation Measurement; GPM)計画をアメリカ航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration ;NASA)との共同ミッションとして実施している。GPM計画は、2014年2月に打ち上げられた主衛星と、国際協力により副衛星群によって構成され、高精度・高頻度な降水観測を目指すものであり、GPM計画の元、日本によって開発された降水データが「衛星全球降水マップ(Global Satellite Mapping of Precipitation; GSMaP; ジーエスマップ)」である。

GSMaPは、北緯南緯60度までの全球の1時間降水量データであり、利用用途に応じて、複数種類のGSMaPが開発・提供されている。レーテンシが重要視される降水の現況監視には、観測後すぐ、実時刻の降水分布を提供できるリアルタイム版(GSMaP_NOW)が活用される一方で、期間や精度が重視される利用用途のためには、3日遅れの雨量計補正版(GSMaP_Gauge)が用いられている。

GSMaPを用いることで、地上観測の有無に関係なく、2000年3月から現在にいたるまでの世界中の雨分布情報が利用可能となり、データは登録後、無償でダウンロードできる。近年では、一般へのGISソフトの普及や地理教育でもGISが重視されてきている背景もあり、タイルマップ形式での配布も試行している。本発表では、GSMaPのアルゴリズムやプロダクトの概要、精度検証結果、地理教育分野等での更なる活用の可能性について報告する。

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