日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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高崎市における若年層をターゲットとした中心商業地の性格の変容
*米浜 健人
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p. 59

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抄録

1.はじめに
近年、地方都市における中心市街地の衰退が問題として取り上げられるようになって久しく、商業分野においても中心商業地の衰退という形で問題提起がされている。中心市街地活性化法におけるTMO認定団体においても、商工会議所主導型のTMOが高い割合を占めており(山川2004)商業者のこの問題への注目度の高さが伺えよう。一方で、これまでの中心商業地研究では、中心商業地の衰退について一律に捉える傾向があった。中心商業地内での空間的な違いについては、旧来の商店街と鉄道駅前において衰退傾向の相違が見られることを指摘した研究や、地方都市において大型店同士が駅前立地型と郊外立地型で競合することを指摘する研究があったが、一方でどのような来街層が現在でも中心商業地に残り、どのような層が抜け落ちているのかという点を含めた研究が必要とである。
 当研究では群馬県高崎市をフィールドとして、中心商業地に立地する大型店の特定ターゲット向け改装ならびに中心商業地における個人商業者、路面店舗入居者の動向をまとめた上で、中心性の高い地方都市において、中心商業地が若年齢層向けの街として生き残りを図りうる可能性がある点を指摘する。

2.高崎市における大型店の動向
 高崎市における大型店立地は、中心市街地立地から駅前立地へと移行してきた(戸所1986) また、大店法改正後の1995年ごろになると、郊外への大型店進出が目立つようになった。この流れの中で、駅前立地型大型店4店のうち1店が撤退、残りの店舗も業態転換や大規模改装を行なった。
 この中でも、GMSの高崎SATYはファッション主体の高崎ビブレへと改装を行い、若年層向けのファッションを扱う店舗へと性格を買えた。ここでは、若年層とくに10代向けのファッションをリードするとされる東京渋谷のSHIBUYA109などのファッション店より積極的に人気店舗を誘致することによって、高崎における10代とくに中高生のファッション情報の発信地としての生き残りを図った。群馬県では唯一の店舗という戦略を取ることによって、県内全域ならびに近隣県からの集客にターゲットを絞った。ビブレの成功に続く形で、駅ビルの高崎モントレーも同様に、改札口直結階を同様にSHIBUYA109からの店舗誘致する大規模改装を行なった。
3.中心商業地に立地する中・小小売店の動向
 近年になって若年層向けのファッション店の中心商業地進出が目立つようになった。ビブレの改装の成功による高崎駅前への商業核の創出が一つの理由となり、駅前ならびに中心商業地への若年層向けファッション店の立地が目立つようになった。これらの店舗は、ビブレからの回遊客を狙う店舗が主だが、ビブレの客層である10代向けの安い古着などを売る店舗と、ビブレを卒業した20代を主なターゲットとするセレクトショプなどの高額な商品を取り扱う店舗となっている。前者は、主に旧来の空き店舗などに比較的小さなスペースで入居し、後者は区画整理事業によって、これまで中心商業地の中では動線ではなかったビブレ裏側の通りに作られた商業ビル群への入居という分化が見られる。

4.まとめ
高崎市においては、高崎ビブレの10代向け業態転換を機会として、中心商業地における若年齢層向け店舗が増加した。ビブレの改装とそれに伴う周辺店の増加は、東京と同じようなファッションを求めたいが、可処分所得などの理由によって東京への距離が遠い中高生をターゲットとして、高崎駅前に「群馬県における渋谷のミニチュア版」的な空間を作り出し、これまでの商圏よりもより広い地域を睨んだ中心商業地へと変貌したといえる。これらのファッション店舗は客のターゲット層を10代から20代前半の若者へと絞っていることから、公共交通機関を使って中心商業地へと集まる層が主にこの年代なのではないかと考えられる。このことは、高崎のように、ある県内でトップクラスの集客力を持つ可能性がある都市の駅前においては、公共交通機関を利用して来街する若年層をにターゲットを絞り、そのニーズに対応した形でのまちづくりに可能性があることを示唆するものである。一方で課題も見られ、駅前立地型大型店についてはこのような形での生き残りが十分に可能だと考えられるが、その周辺小売店については、粗利が決して高くない中高生向けの商店経営が果たして持続できるか否かという、課題も残っている。

参考文献
山川充夫(2004)『大型店立地と商店街再構築』 八朔社
戸所隆(1986)『商業近代化と都市』 古今書院

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© 2005 公益社団法人 日本地理学会
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