日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会秋季学術大会
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ラオス,ビエンチャン平野の村落分類
宮川 修一足達 慶尚Sivilay Sengdeaune*野中 健一
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p. 92

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抄録

 東南アジア大陸部の平野地域は,生物多様性と雨季乾季の季節変動性によってその環境が特徴づけられる。この環境への適応がどのようになされてきたか,また,それを生かした資源利用や社会システムがどのようなものであるか,1945年以降の環境と社会の変化を村落レベルの生態史として明らかにすることが本研究の目標である。とくに,ラオスの首都ビエンチャン北側に位置するサイタニー郡をとりあげて2003年度以降調査を進めている。 この報告ではサイタニー郡の全村の生産と資源利用に関する現在の情報を収集し,これを地理情報としてとりまとめた結果をもとに,村落バリエーションに関して考察を行い,サイタニー郡の村落の特徴,資源利用と農業生産の実態を示すことを目的とする。 調査は,2004年7月から2005年3月にかけてビエンチャン市の東部に位置するサイタニー郡全104ヶ村の,自然環境,土地利用,生業活動,社会資本などについて各村で村長を対象として,聞き取りを行った。 この地域は古い時代から水田を中心とした生業生活と土地利用が継続してきたと考えられるが,現時点でも森林の面積は大きく,水田は森林を伐採して開かれつつある。住民は農業生産の傍ら,森林や池沼あるいは耕地の中からも多種多様な野生生物を採集して利用し,また市場で販売して生計の足しとする生計戦略が特徴である。 このような特徴から郡内の村落の特徴を,主成分分析を行って分析・考察した。聞き取り調査のうちこの分析に利用した項目は,表1に示すとおりである。 分析の結果,第1主成分の寄与率は44.1%,第2主成分の寄与率は26.5%で,その累積寄与率は70.6%となった。第1主成分は都市化の程度,第2主成分は水との関係の深さを示す。これにより村を_I_「都市化園芸農業地域」,_II_「豊富な自然資源依存地域」,_III_「森林依存地域」,_IV_「都市化集約稲作地域」と分類した(図1,図2)。 このような村の郡内の分布を図1に示した。_I_の村はビエンチャン市につながる南西部ビエンチャン市街近郊,国道沿いおよびグム川沿いに3カ所見られる。_II_の村は郡内西部のグム川近傍と郡内東南部とに大きく集中する。_III_の村は北部山麓から東部グム川近傍を通りビエンチャン市街近郊まで分布する。国道沿いの_IV_の村を取りまくような分布も見られる。_IV_の村は市街近傍と国道沿いに集中し,さらにグム川に接して数ヶ村の分布がある。自然条件の違いによって_II_と_III_の分化があり,都市化の影響によって_II_から_I_が,また_III_から_IV_の村が生まれつつある,といえる。

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