日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会春季学術大会
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2030年における日本の市区町村別将来推計人口
*小池 司朗山内 昌和
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p. 195

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抄録
_I_ はじめに
 日本は、間もなく人口減少時代を迎えようとしている。地域に関心をおく地理学において、今後の地域人口の見通しを把握することは、学術研究のみならず研究成果を政策等へ応用する上で有用であろう。
 国立社会保障・人口問題研究所(以下社人研とする)では、2003年12月に2000_から_2030年における市区町村別の将来人口推計を公表した(国立社会保障・人口問題研究所、2004)。同推計は、社人研で行う人口推計としては初めての試みである。本報告では、社人研で実施した市区町村別将来人口推計について、推計手法および結果の概要について提示する。なお、推計結果を分析したものとして、西岡ほか(2003、2004a、2004b)がある。

_II_ 推計手法
 推計の方法は、5歳以上人口についてはコーホート要因法を用いた。これは、ある年の男女・年齢別人口を基準として、出生率や死亡率、移動率などの仮定値を当てはめて推計するものである。0-4歳人口の推計は、婦人子ども比(15-49歳女子人口に対する0-4歳人口の比)の仮定値によって推計した。出生率ではなく婦人子ども比を推計に用いた理由は、主として市区町村別の出生率は年による変動が大きいためである。
 さらに、上述の方法により各市区町村別に推計値を求めた後、男女・年齢別推計人口の都道府県内全市区町村の合計が、都道府県別将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所、2002a)による各都道府県の男女・年齢別推計人口の値と一致するよう一律補正を行い、これを最終推計結果とした。このため、市区町村別の将来人口推計の結果は、全国推計(国立社会保障・人口問題研究所、2002b)のうちの中位推計の結果とも整合性をもつ。
 なお、推計単位としたのは,2001年12月末現在の市区町村の領域(3245自治体)である。

_III_ 推計結果
1.総人口
 2000年と2030年の人口を比較すると,人口が増える自治体は431(13.3%)で,このうち,人口が2割以上増加する自治体は91(2.8%)ある。残る2814自治体(86.7%)は2030年の人口が2000年よりも減少する。その内訳をみると,2割以上人口が減少する自治体が1817で過半数(56.0%)を占めている。この中には,2030年の人口が2000年の半分以下になってしまう自治体も158(4.9%)含まれる。

2.年齢3区分別人口
 全国推計(国立社会保障・人口問題研究所、2002b)によれば、総人口に占める0_から_14歳の割合は、2000年の14.6%から2030年には11.3%に低下する。市区町村別にみても、99.3%の自治体で年少人口割合は低下し、年少人口割合10%未満の自治体は、この間に3.2%から31.4%へ著しく増加する。
 一方、総人口に占める65歳以上人口の割合は、全国推計(国立社会保障・人口問題研究所、2002b)では、2000年の17.4%から2030年には29.6%に上昇する。市区町村別にみても、99.6%の自治体で老年人口割合は上昇し、老年人口割合40%以上の自治体は、この間に2.3%から30.4%へ著しく増加する。

<文献>
国立社会保障・人口問題研究所2002a.『都道府県別将来推計人口-平成12(2000)-42(2030)年-(平成14年3月推計)』人口問題研究資料306号
国立社会保障・人口問題研究所2002b『日本の将来推計人口-平成13(2001)-62(2050)年-(平成14年1月推計)』人口問題研究資料303号
国立社会保障・人口問題研究所2004『日本の市区町村別将来推計人口-平成12(2000)-42(2030)年-(平成15年12月推計)』人口問題研究資料310号
西岡八郎・小池司朗・山内昌和2003.日本の市区町村別将来推計人口-平成12(2000)-42(2030)年-.人口問題研究59-4:52-90
西岡八郎・小池司朗・山内昌和2004a.市区町村人口の将来動向-日本の市区町村別将来推計人口・2003年12月推計-.厚生の指標 51-7:1-8
西岡八郎・小池司朗・山内昌和2004b.21世紀前半の地域類型別将来人口の見通し.地域開発482:7-13
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© 2005 公益社団法人 日本地理学会
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