抄録
2005年パキスタン北部地震では多数の斜面崩壊が発生した。SPOT5衛星画像を用いて斜面崩壊を判読し、分布図を作成した。その結果、Kumahara and Nakata (2006)のBalakot-Garhi断層の上盤側で斜面崩壊が多発しており、その約半数が断層から2 km以内で発生していた。Balakot-Garhi断層の上盤側4kmの範囲に発生した大規模な斜面崩壊について、斜面の方位をSRTM数値標高データから計算し、8方位に分類した結果、そのほとんどが南西または南に向いていることが分かった。この範囲の一般斜面の方位分布と比較すると、斜面崩壊が南西から南を向いた斜面に選択的に発生したことは明らかである。また、SARデータを用いて明らかにされた地表の地殻変動の水平成分は、Balakot-Garhi断層の上盤側では、南から南西方向となっており、斜面崩壊の卓越方位ときわめてよく一致する。このことは、斜面崩壊が、地表がまさに「動く」ことにより発生したことを示唆している。