日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 121
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釧路の霧の経年変化
*佐川 正人
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キーワード: 経年変化, 移流霧, 放射霧, 釧路
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抄録
I.目的
北海道東部太平洋側では濃霧の頻発することが知られている.一部の住民の間では近年において霧が減少したのではないかと言われている.本報では霧の出現の長期的な経年変化を明らかにし,その解析結果について報告する.
II.使用資料
使用資料は気象庁SDPおよびSD資料(CD-ROM)と気象庁電子閲覧室の資料である.気象庁電子閲覧室の資料は長期的(1931年から)な資料を得るためのみに使用した.解析対象期間は1931年から2005年とした.SDP(毎時資料の内3時間毎の資料のみ採用)およびSD資料(3時間毎の観測)は1961年から1999年まで使用した.これは釧路地方気象台が2000年10月に移転したため,この前後において観測資料に連続性が無いと考えたためである.また,釧路地方気象台では1995年4月より24時の霧に関する観測が中止されたので,資料の均質性を保つためにSDおよびSDP資料については全期間において24時の観測資料を除いて解析をおこなった.
III.結果
釧路の風配図を第1図に示す.これによれば作図対象期間においては北北東の風が最も卓越しているものの,これを霧出現時のみを抽出し作図すると,南よりの風が最も卓越することが理解できる.これは霧発生時においては,主に釧路の南海上からの移流霧(海霧)を生じさせる風が卓越するためと容易に考えられる.霧発生時においては北よりの風も若干卓越している.これは釧路湿原からの放射霧とも想像できるが,まだ検討の余地がある.第2図下を見ると年霧日数,年霧回数ともに(一概に同質の資料とは言えないが)減少傾向にある.年霧回数を北系統の風と南系統の風に分けて比較すると,特に北系統の霧は1980年頃を境に減少傾向に歯止めがかかっているように思われる.これを霧回数の年増加率(第2図上)で見ると,その傾向が明らかである.南系統の霧(≒海霧)回数も同様の傾向にある.気象台移転に伴って2000年以降との比較は一概に出来ないものの,霧の出現回数の減少は歯止めがかかっていると考えられる.
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