日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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地域防災に影響を与える歴史的及び社会的要因の研究
福井県福井市の中心市街地を事例として
*水野 智
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p. 101

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抄録
はじめに 我が国では高度経済成長による都市化とともに都市水害の発生頻度が増加し、特に地方都市における中小河川において脅威となっている。2004年度の豪雨災害により、九頭竜川水系足羽川の下流部に位置する福井県福井市は、河川の破堤や氾濫による大きな被害を受けた。都市水害による犠牲者減少のためには自主防災組織の育成・活動活性化が重要であるが、既往の研究では河川整備や都市化といった歴史的変遷や社会的背景が地域防災にどのような影響を与えてきたのかが検証されていない。本研究では、福井県福井市において地域の変遷が防災組織に与えた影響について検証を行った。調査方法 最初に河川整備、防災行政、都市化の3点について資料分析と行政機関への聞き取りによって地域に与えたインパクトを考察した。その結果をもとに、福井県福井市の中心市街地において5つの地区を選定し、地区代表者への聞き取りや地区史の記述をもとに先の3点と地域の歴史、及び防災組織・活動との関連性について考察した。最終的にそれらが2004年度水害における地域の対応にどのような影響を与えているのかを検証し、地域防災と歴史要因との関連性について考察を行った。結果・考察_丸1_河川整備、防災行政、都市化と地域の関連明治期中頃まで河川整備は市町村の個別整備による割合が大きかったが、明治29年に旧河川法が指定されて後は国及び県の占める割合が上昇し、治水事業は次第に地域の手から離れていったことが明らかとなった。防災行政については、当初の地域防災計画策定時点においては水害が相次いだこともあって水防の項目に重点がおかれていたが、その後県下における大規模水害の減少に伴い、改訂に伴って豪雪、原子力、震災等の項目にシフトしていくことが示唆された。また、福井市の都市化は昭和期以降インフラ整備を伴いながら漸次進展していったが、昭和43年の福井国体の頃よりスプロール化と縁辺部への進出がみられるようになり、市域の拡大とともに縁辺部のベッドタウン化が進展し、新規流入住民の増加による地域問題を抱えることとなった。特に周縁の地域では下水道の整備が遅れ、長期に渡り内水氾濫に悩まされてきた実態が明らかとなった。_丸2_地域毎の防災の歴史と2004年度水害福井市の5つの地区を対象とした調査結果では、河川整備、防災行政、都市化との相関により、平時の地域防災活動がある程度規定されることが明らかとなった。2004年度水害との関連では、地区全体を包括する防災組織を持つ地域は適切な対応が行えることが明らかとなった。一方で地域全体を包括する自主防災組織の無い地域においては、過去の水害経験や新興住宅の多寡、日ごろの町内会活動などによって、対応に明確な差異が生まれたことが明らかとなった。結論都市水害と防災を考察する上においても、地域の歴史や都市化といった社会的背景との関係性を考慮に入れることで、より効果的な地域防災活動につなげることが出来る。また地域防災は地域コミュニティを基盤としているため、活発な機能のためにはコミュニティの内発的な力を喚起することが必要である。特に既往水害の経験が乏しい地域や、新規住民の多い地域は水害対応や地域活動に問題を抱える傾向にあるため、これらの地域で重点的に行政・地域双方から働きかけを行うことで、地域全体としてまとまりのある防災活動が可能になるものと期待される。参考文献北陸豪雨災害緊急調査団 「平成16年7月北陸豪雨災害緊急調査報告書」 pp154_-_232 土木学会 2005内田和子著 「近代日本の水害地域社会史」 古今書院 1994JICA 「日本の洪水災害と防災事業から学ぶこと」 防災と開発 pp23ー46 2003
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© 2006 公益社団法人 日本地理学会
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